石原さとみ、「あの時の顔、そして手はいまだに忘れられません」

2012.11.16 17:10

故・井上ひさしさん最後の戯曲「組曲虐殺」(12月7日~30日、天王洲 銀河劇場)に出演する女優の石原さとみが、井上さんの生誕78周年となる16日にコメントを寄せ、「あの時の顔、そして手はいまだに忘れられません」と生前の思い出を語った。

井上さんは放送作家として「ひょっこりひょうたん島」(山元護久と共著)の台本を執筆し、現代的センスによる笑いと風刺で子どもたちを中心に多くの人々に愛された。演劇界へは「日本人のへそ」でデビューし、1972年には岸田戯曲賞を受賞、さらに小説「手鎖心中」で直木賞を受賞し、以降戯曲、小説、エッセイなど幅広い活動を続け、各分野での受賞多数。

1984年にこまつ座を旗揚げ。「頭痛肩こり樋口一葉」をはじめ「きらめく星座」「父と暮せば」「太鼓たたいて笛ふいて」「組曲虐殺」など、多くの書き下ろし作品を上演。「紙屋町さくらホテル」「~東京裁判三部作~『夢の裂け目』『夢の泪』『夢の痂』」「ムサシ」など、2010年4月9日に75歳で亡くなるまでの生涯に書いた戯曲は70作にも及ぶ。

こまつ座では今年1月から12月にかけて「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」を開催。1月の第1弾「十一ぴきのネコ」から始まり、上演中の第7弾「日の浦姫物語」まで7本が幕を開けた。そして12月7日より開催の第8弾、井上さんにとって最後の戯曲であり意欲的音楽評伝劇「組曲虐殺」がこのフェスティバルのファイナルを飾る。

プロレタリア文学の旗手・小林多喜二の生きた時代を描いた同作は、官憲の拷問によって、わずか29歳の若さで虐殺されるまでの2年9ヵ月の多喜二と、彼を取り巻く人々の姿に迫っていくもので、2009年に演出・栗山民也、多喜二に井上芳雄を得て上演。第17回読売演劇大賞・芸術栄誉賞(井上ひさし)、最優秀スタッフ賞(小曽根真)、優秀演出家賞(栗山民也)、優秀作品賞と主要演劇賞を総なめにした井上さんの代表作のひとつで、井上芳雄、石原さとみ高畑淳子ら初演と同じオリジナルキャストによる上演となる。

「組曲虐殺』キャストからコメント到着

井上芳雄:井上先生と一緒にご家族だけの焼き肉に加えて頂いた時には「芳雄さんはうちの長男ですね」なんておっしゃってくださいました(笑)「組曲虐殺」をご覧になれば、多喜二の人生をもっと深く知ることができて、きっとすごく驚く。それはもう、すごい体験になるんじゃないかと思うんです。多くのみなさんの心に入り込めるような作品のはずです。

石原さとみ:「組曲虐殺」のゲネの時は、すごく泣きはらした顔で楽屋までいらっしゃって、握手をしながらずっと褒めて下さいました。あの時の顔、そして手はいまだに忘れられません。井上先生が命を削りながらも伝えたかった想いを、もっと丁寧に伝えられたらなと思っています。3年前よりも進化した作品をお見せしたいと思います!

高畑淳子:井上作品に出演する時はいつも、芝居の原点みたいなことを問われている気がします。そこが骨の折れるところであり、面白いところなんです。先生の芝居はそういう意味で本当に一筋縄ではいかないんです(笑)「組曲虐殺」はつらい時代や状況を乗り越えて生きようとする人々が、明るく、たくましく描かれています。「言いたいことも言えない、言いたいことも書けない、戦争へと向かった時代がかつてあった。今後も一歩間違えば、またその方向に進んでしまう」ということを押しつけがましくなく観せられるのが井上作品の魅力であり、演劇や映画の役割でもあると思うんです。

12月28日13時30分公演終了後には、出演者全員によるトークイベントも開催。初演の秘話や作品への思いを熱く語る。(モデルプレス)

井上ひさし生誕77フェスティバル2012第八弾ファイナル
「組曲虐殺」
<東京公演>2012年12月7日(金)~30日(日)天王洲 銀河劇場
【作】井上ひさし
【演出】栗山民也
【出演】井上芳雄、石原さとみ、山本瀧二、山崎一、神野三鈴、高畑淳子
【音楽・演奏】小曽根真
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