上野樹里、結婚して“生まれた願望”と“変わらないこと”―30代迎え「今は過渡期」 モデルプレスインタビュー
2016.08.17 07:00
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女優の上野樹里(30)が、モデルプレスのインタビューに応じた。演技力が高く評価され、「天才」と呼ばれることも多い彼女。個性的な役柄も難なくモノにするため、そのイメージが強く残っている人も多いかもしれないが、10月8日に公開される主演映画『お父さんと伊藤さん』では、これ以上ないほどの“等身大ぶり”で魅せている。同作は、20歳差の彼氏(リリー・フランキー)、頑固な父親(藤竜也)、そしてそんな2人と同居生活を送ることになる34歳の彩(上野)の物語。家族の在り方を考えさせられる、“何気ない”日常が切り取られている。5月には、3人組ロックバンド・TRICERATOPS(トライセラトップス)のメンバー・和田唱との結婚を発表し、上野自身も家族を持った。「ちょうど『家族の物語がやりたい』って思っていたところだったんです。『こういう作品に出演したい』って思っていると、いつも自然と来るんですよ、出会いが!」とそれは偶然のタイミング。もしかしたら、彼女の頭の中では、“家族”に対する意識が知らぬ間に高まっていたのかもしれない。
30代迎え「今は過渡期」
演じる彩は、20歳も年上の彼氏である伊藤さん(リリー・フランキー)と、結婚というスタイルをとらず、自由な関係を楽しむ、等身大の女性。お互いが自立し、程よい距離感を保つ関係は、今を生きる多くの女性の共感を誘うはず。「役で『こう!』ってある程度限定された方が、演じる方も楽なんです。でも、それがビジュアルありきの役だと、自分が奴隷になっちゃうんです。尻に敷かれちゃうというか。今回演じた彩は、自分と共存できるし、上手く調和できる役。20代の頃は、奇抜なキャラクターの方がやりやすかったんですけど、30歳になった今は自分の内面から出てくるものを活かしたいと思うようになりました。その人の味が出て、役の魅力がさらに深まるような。例えば、『家族ノカタチ』(2016年1月期、TBS)でご一緒した、西田敏行さんや風吹ジュンさん。そういう素敵な先輩役者に自分がなれるか分からないですけど、今は過渡期だと思っています」。
30歳という節目は、自分を見つめ直すひとつのきっかけになったのだろう。「お人形みたいに、その役の全身スーツを着て演じるっていうのももちろん面白いと思いますけど、今はありのままの自分で、お客さんとコミュニケーションがとれる作品に出たくなりました。今はヒロインは綺麗で可愛くて、1番輝いてなきゃいけないって役ではないなと。オンの状態じゃない自分を出したことってなかったので、それをやってみたいって。多分、20代の頃ならできなかったと思います」と、気持ちはどんどん変化していく。
“今”表現したいこと―「気負うことなく出せた」
とは言え、等身大の役柄を演じる上でも、彼女なりのヒロイン像はもちろん存在しており「彩の服装は、自分に近い感じで、デニムにTシャツとか。あとは、ご飯を作る描写も、普段の私に寄せた動きをしています」。その何気ない日常を描く中では、タナダユキ監督の女性らしい感性が活きているようで「柔軟さと視野の広さ、肩の力が程よく抜けた感じが良いなって思いました。外見よりも中身から醸し出すものを撮ってもらえたような気がします」と上野は振り返る。タナダ監督によって引き出された、これまで見せたことのなかった一面。それこそ、今の彼女が望んでいたモノ――「人間ドラマの1番生々しい部分というか、人に見せられない部分とか自分の原点の部分にスポットを当てているのが“家族モノ”の面白さかなと思っています。女性の監督ということで、それを気負うことなく出せました。タナダ監督は現場で細かく指示を出すってタイプの方ではないから、こっちが『何か言ってくれるかな?』って思っていても、特に何もないんです(笑)。でも、後からメールで『ここが良かったよ』って丁寧に連絡をしてくださるんです。正解がない世界だからこそ、役者本人から出た良いモノを詰め込んでくれる。あんまり限定されると、それは難しくなると思います」。
結果、人間味溢れる主人公が完成。「その演出があったからこそ、お父さん(藤)と伊藤さん(リリー)、彩の粒がそれぞれ立って、生き生きとしていた気がします」と、上野自身が役のエッセンスのひとつになった。
結婚して“生まれた願望”と“変わらないこと”
交際がスタートしてから、公開までの間に籍を入れた。作品に携わっている間に、自身の環境が変わった今、この映画を観た感想を尋ねてみるも「役者なので、自分の生活と映画の世界は全然関係ないんですよね。アーティストの方だったら、出会う前に作った作品を出会った後に聞いて『おっ何か違うな』とか『この感情、今の自分にフィットしてるな』とか思うのかもしれないですけど」と、“役”というフィルターを通して観た自分に変化はないようだ。
「世界観が最初から存在しているから、『こう具現化したい』『この人物はきっとこういう感じだ』って演じていくだけ」と当たり前だが役は役。「映画の現場では、冷蔵庫にもちゃんとその役をイメージした食材が入っているから、その場の空気を吸っているだけで役になれるんです。気分的には、圧力鍋に放り込まれた、じゃがいも、にんじん、お肉…蓋をされたら肉じゃがになる(笑)。そんな感覚です」と“自分”であって“自分”ではない。
しかし一方で、“上野樹里”本人としては「いつか、家族と一緒に仕事がしてみたいな」と新たな願望も生まれた。それは、「みなさん色々な仕事をしている方なので、もちろんお芝居だけじゃなくて、料理でも、絵でも、音楽でも、映像でも。何でもいいから一緒にやってみたい」とついついこちらの期待も膨らんでしまうような話だった。
上野樹里が語った「夢を叶える秘訣」―葛藤を超えた先
10代の頃から第一線で活躍し続け、今「過渡期に入った」と明かした彼女。数々の夢を手にしてきた裏側では、葛藤もたくさんあったはず。その経験を踏まえ、上野の教えてくれた「夢を叶える秘訣」は「植物のように、光が差す方に進んでいくこと」。
「苦肉の策でやったことは、結果ネガティブにしかならないし、だったら現状維持の方がいいと思う。周りの人が『ない!』って言っても、私は自分の針が触れたらチャレンジします。自分にしか分からないパワーを感じることってあると思いますし、挑戦ってそういうものだと考えています。こういう仕事をしていると、どんなに頑張っても、悪いこと言われることもありますが、きっとそういう世界も存在してなきゃいけないんだと思うんですよ。だから、それはパラレルワールドだと思って、自分のためになることや意見を積極的に取り入れていけばいい。本当にピュアに頑張ってる人は、絶対いい方向に進んでいくと思う。結果がどうであれ、いい経験になる。私自身も、そういうところを大事したいです」。
いつまでも変わらないその透明感は、心を映しているのだと思った。30代になり、結婚をし、過渡期を迎えても、その真っ直ぐな心が差す先を信じて進んでいく姿勢は変わらない。そしてそれは、彼女にとって全て“とても自然な事”。「本当に計算じゃなくて、運でしかない。毎回授かるような気持ちなので、次にどんな役に挑戦するかは分からないです」――この言葉を聞いて、これからの“上野樹里”がますます楽しみになった。(modelpress編集部)
上野樹里(うえの・じゅり)プロフィール
1986年5月25日生まれ、兵庫県出身。2001年、医薬品ブランド「クレアラシル」の3代目イメージガールに選ばれ、芸能界入り。2002年には、NHK月曜ドラマ「生存 愛する娘のために」で女優デビューを果たし、2004年に公開された映画「スウィングガールズ」では第28回(2004年度)日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後も、「のだめカンタービレ」(2006/フジテレビ)で、2007年度エランドール賞新人賞などを受賞している。2011年、NHK大河ドラマ第50作「江~姫たちの戦国~」の主演に抜擢。近年は「アリスの棘」(2014/TBS)、「ウロボロス~この愛こそ、正義」(2015/TBS)、「家族ノカタチ」(2016/TBS)などに出演し、2016年は、映画「青空エール」(8月20日)、「お父さんと伊藤さん」(10月8日)の公開を控えている。
映画「お父さんと伊藤さん」(2016年10月8日公開)
原作:中澤日菜子「お父さんと伊藤さん」(講談社刊)脚本:黒沢久子
監督:タナダユキ
キャスト:上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也
<ストーリー>
自由気ままに暮らす34歳の彩(上野樹里)は、給食センターで働く20歳年上の男性・伊藤さん(リリー・フランキー)と同棲中。家庭菜園をしたり、穏やかな生活を送る二人の元に、ある日突然、長男の家を追い出された彩の父親が転がり込んでくる。
年齢の割には頼りなさげな伊藤さんの存在を知り、驚くお父さんだったが、「この家に住む!」と頑として譲らない。お父さんが持ってきた謎の小さな箱の中身は?付き合っていてもなかなか明かされない伊藤さんの過去には一体何があったのか?
ヒミツばかりのお父さんと伊藤さんに囲まれながらも、少しずつひとつの家族のようになってきた矢先、ある事件が起きて…3人の奇妙な共同生活をコミカルに描く、心暖まる物語。
【Not Sponsored 記事】
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