モデルプレスのインタビューに応じた押切もえ(C)モデルプレス

押切もえ「諦め人生で負け癖」だった過去―だからこそ紡げた物語と開花した才能 モデルプレスインタビュー

2016.02.26 06:00

モデルの押切もえ(36)がモデルプレスのインタビューに応じた。モデルとして活躍する傍ら、文芸誌で連載を持つ作家でもある彼女は2作目となる小説「永遠とは違う一日」(新潮社)を26日に刊行。処女小説「浅き夢見し」(小学館)は、発売後まもなく重版が決定するなど、大きな話題に。そしていよいよ、満を持しての新刊を世に送り出す。小説家としての成長や今作に込めた思い、そして「諦め人生」だったという過去を語った。

今作「永遠とは違う一日」は、「小説新潮」で隔月連載された作品を連作短編集としてまとめたもの。押切の身近にあった芸能マネージャーやスタイリストのほか、アイドルを失格した女子高生、こじらせ系のバツイチ40代女性など、さまざまな女性を主人公に、恋や仕事に奮闘し、一歩を踏み出す姿を描いた、読者の背中を押す6つの物語が収録されている。

名誉ある文芸誌での連載

小説を執筆する前より、エッセイなどの著書を発表しており文章を書くことに長けている押切。処女小説の反響はとても大きく、その後文芸誌での連載の話が舞い込み、当時を「舞い上がるほど嬉しかったです。次は何を書こうかなって」と思い返す。

有名作家たちと名を並べての文芸誌での連載は、大変名誉あること。しかし、本業がモデルである押切は、そちらの活動も順風満帆で多忙を極める。専属モデルを務める「AneCan」では、同誌の顔としてカリスマ性を発揮している。「連載といっても隔月なので、緩やかなもの。気楽にやっていました」と余裕を見せるが、原稿を1本書き上げるのに1ヶ月以上の時間を要したという。ときには番組出演の5分前まで編集者と電話でやりとりをするなど、徹底的な推敲で、納得のいくものになるまで力を抜かなかった。

押切もえ(C)モデルプレス
押切もえ(C)モデルプレス
押切もえ(C)モデルプレス
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自ら取材へ…行動力が生み出した傑作

6つの物語の主人公は、芸能マネージャーやスタイリスト、画家や女子高生などさまざま。マネージャーやスタイリストは、モデルの押切にとって身近な存在だ。周りの人物の動きをヒントに想像力を働かせた。また、アイドルグループや音楽グループに所属する人物たちも描かれている。表舞台に立つといった点では、押切と共通するが、畑が違うのも事実。こちらも、自身の経験を踏まえながらイメージを膨らませ、ペンを進めた。

ほか、小説には助産師やLGBTと呼ばれる性的少数者も登場する。題材として扱うべく、自らインターネットで調べてアポイントを取り、情報を足で稼いだ。

「実際に助産師さんや性の悩みを持つ方にお話を聞くことができました。まさに突撃インタビュー(笑)。みなさん『誰か来た』といった感じで『モデルさんなのよね?』と言われ、驚かれたことも(笑)。とても貴重な経験になりました」

苦悩の時代を経て 経験や過去を投影させたキャラクター

今作には、「ずっと幸せを保証されている人はいない。だからこそ1日を楽しんで味わってほしい」といったメッセージが込められている。また連作短編ということで、人とのつながりを大切にし「人との関わり合いは、知らないところでつながっているもの。あまりいい印象がない人も、他の人にとっては大切な人だったり、何とも思っていなかった人が、実は自分のことを思って支えてくれていたり。そういった温かさも感じてもらえればと思います」と願った。

6人の主人公には、それぞれ押切の経験や心情が投影されている。「仕事で疲れて帰ってきたときは沙也、誰かを想ってうじうじするときはアキ。みんな少しずつ重なりますが、諦め人生で負け癖なところは入っているかと思います」と意外な言葉を口にした。

押切といえば、蛯原友里、山田優らとともに2000年代の「CanCam」黄金時代を築いてきたカリスマモデルの一人。ティーン誌への出演を経て「CanCam」専属モデルに加入するも、当時所属していた事務所が解散。交通費のためにアルバイトをし、スケジュールは自身で管理、オーディションを受けても落選する日々が続いた時期もあったという。そんな苦悩の過去があったからこそ、前を向く6つの物語を紡ぐことができた。

押切もえ(C)モデルプレス
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押切もえ(C)モデルプレス
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「書けない」「展開がおもしろくない」孤独な戦い

処女小説出版のきっかけは「小説を書いてみない?」と声をかけられたこと。「その気になってしまった」という彼女は、約3年をかけ「浅き夢見し」を書き上げた。作家としての成長を聞いてみると「自分なりに少しは。リラックスして書けるようになったなと1冊を振り返って思いましたね」と微笑む。

長編作で小説家デビューした押切だが、今回は短編に挑戦。作家にとって得意不得意が分かれるところだが「主人公や書き方を変えられるのでとても楽しかったです。短編はこういう感じなんだと発見がありました。もっと書いてみたいですね」と手応えを感じているようだ。

しかし、連載中は10時間以上原稿に向かっても1行も進まずに「書けない」「展開がおもしろくない」と悩んだこともあった。そんなとき、彼女の背中を押したのが「下手でも何でもいい。あなたが思うように書きなさい」という瀬戸内寂聴の言葉だった。物書きの先輩の言葉に救われ、押切はまた原稿に向き合う。

妥協を許さず、何事にも全力投球の性格が玉に瑕なのかもしれない。もちろん、締め切りありきだが、前作の経験から学び、運動や友人との会話、本や映画などに触れ感動することで上手にリフレッシュしながら執筆活動に励むことができたという。「本気で楽しめば、自然にがんばることにつながる」その信念を胸に抱き、またペンをとる。

「ゴーストライターがいるでしょ?」は最高の褒め言葉

圧倒的な筆力は、ある有名作家に「ゴーストライターがいるでしょ?」と疑われたことも。そんな声を「自信がつきました。やったぁ!って」と受け止め、思い切り喜ぶ。読者からの反響はあっても、正解がないゆえ「合っているのか、おもしろいのか」と疑問に思うこともあった。だからこそ、ゴーストライターの存在を疑われたことは、彼女にとってのこれほどにない褒め言葉だ。

生活も作家色に染まっていったそうで「作家さんはとにかくタンパク質を摂ると聞いたので、私も朝から卵かけごはんや納豆ごはんなどタンパク質を摂るようになりました。それまで、朝は果物や炭水化物が定番でしたが、お腹がいっぱいにならなくて悩んでいたんです。朝、タンパク質を摂るとお腹いっぱいになって、すっきりいいスタートが切れます」と変化を紹介。スタイルキープのために取り入れているホットヨガも、良いリフレッシュ法になったようだ。

押切もえ(C)モデルプレス
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押切もえ(C)モデルプレス
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モデル、小説、絵画…あらゆる才能

押切といえば昨年、歴史ある公募展「第100回記念二科展」で初出展した絵画が入選したが記憶に新しい。モデル業のみならず、文化活動での才能を発揮している彼女に「そのバイタリティはどこから湧いてくるのか?」と聞くと「何もできませんが、夏休み前には『40日間、何をしよう?』とワクワクする子どもでした。今でもそれが続いているのかも」と謙虚な答えが返ってきた。好奇心旺盛で興味に情熱を注ぐ人柄は、幼い頃からのようだ。

毎度その才能に驚かされるが、今後は新たなチャレンジよりも、今取り組んでいるものを極めていく姿勢だ。モデル業はもちろんのこと、小説、絵画を深め「力を抜いて楽しみたい」と優しく笑う。また、今作の執筆にあたり、取材したことは強く思い出に残っているようで「いろんな人の話を聞いて、とても感動しました。もっといろんな方のお話を聞きたい、いろんな方の現場を見ていきたいと思いました」と目を輝かせる。早くも次作に期待できそうだ。

もがいた過去と夢を叶える秘訣

最後に、押切が思う夢を叶える秘訣を聞いてみると、今作に登場した6人の主人公たちと重ねながら「素直になること」だと回答。押切にも辛酸を嘗めた過去があった。「CanCam」専属モデルの肩書を得ても、月に2回しか撮影に呼ばれなかったこともある。輝かしい活躍の裏側でオーディションに苦戦するなど、常に波はあるというが「単純に自分が悪いことだってあります」と受け止め「だからこそ素直になる。自分はどうしたいのかを心に聞くことってすごく大事なことだと思うんです。そうすることで新しい力が湧いてくる気がします」と目を細める。

そして「すごく人に恵まれて、運もよくやってこられた」とこれまでを思い返す。うまくいかなかった時期もあったが「どこかで諦めていたら、きっと今、違う気持ちで振り返っていたと思います。いい思い出ばかりです」と語る。今作の出版も、作品に込めた思いのように人との縁があったからなのかもしれない。この先もモデルとしてはもちろん、作家・押切もえの活躍も注目していきたい。彼女の挑戦は続いていく。(modelpress編集部)

押切もえ(画像提供:所属事務所)
押切もえ(画像提供:所属事務所)

押切もえ(おしきりもえ)プロフィール

1979年12月29日、千葉県生まれ。高校生の頃よりティーン誌にてモデルとして活動を始める。雑誌「CanCam」の専属モデルを経て、現在は2006年に創刊した姉妹誌「AneCan」の専属モデルを務める。テレビ、ラジオ、イベント出演、コラム執筆など多方面で活躍中。「モデル失格」「心の言葉」「押切もえの恋するソウル完全ガイド」など著書も多数。作家としては、2013年8月には、処女小説「浅き夢見し」(小学館刊)を発表。2016年2月26日、自身2作目となる小説で初の連作短編集「永遠とは違う一日」(新潮社)を発売。

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