山田裕貴&佐藤二朗が映画『爆弾』を熱く語る!「最初から最後までずっと面白い極上のエンタメ作品」
映画『爆弾』は呉勝浩の同名小説(講談社文庫)の映画化作品。この映画に出演している山田裕貴さんと佐藤二朗さんにインタビュー。撮影の裏側、好きな映画などさまざまなお話を伺いました。※画像: (c)呉勝浩/講談社 (c)2025映画『爆弾』製作委員会
映画『爆弾』の原作は、「このミステリーがすごい!2023年版」(宝島社)「ミステリが読みたい!2023年版」(ハヤカワミステリマガジン2023年1月号)で、1位を獲得したベストセラー小説です。
暴行事件で逮捕されたスズキタゴサクと名乗る男(佐藤二朗)は取調室で「霊感で事件を予知できます。これから3回、次は1時間後に爆発します」と奇妙なことを言い出します。爆発の場所、目的などは語らず、クイズを出して警察関係者をけむに巻くタゴサク。警視庁捜査一課の類家刑事(山田裕貴)は彼から真実を聞き出そうと取り調べを開始するのですが……。
取調室で繰り広げられる男2人の頭脳バトルや、都内に仕掛けられた爆弾を探し、奔走する警察たちの姿が、スリリングかつ熱く描かれるリアルタイムミステリー映画です。まず、お二人に出演を決めた理由についてお伺いしました。
映画『爆弾』出演、山田裕貴さん&佐藤二朗さんにインタビュー
――最初に原作や脚本を読まれたときの感想と出演の決め手について教えてください。
佐藤二朗さん(以下、佐藤):原作小説を読んだとき、とてつもなく面白い!と思いました。そしてスズキタゴサクと自分には共通点があることに気付いたんです。どこにでもいそうな風ぼう・中年・小太り・シンプルな名前・中日ドラゴンズファン。それで一気に親近感が湧いて、嬉々として出演させていただきたいとお返事をしました。
山田裕貴さん(以下、山田):僕も原作を読んで、めちゃくちゃ面白いと興奮しました。ストーリー、サスペンス、キャラクターなど、エンターテインメントの要素がぎっしり詰まっているので、この原作を2時間の映画に収めるのは大変だなと思ったくらいです。
出演の決め手となったのは、この映画のプロデューサーの言葉です。僕が出演した『東京リベンジャーズ』シリーズと同じ方なのですが、その方から「山田くんのイメージは類家にピッタリだと思ったんだ。だからオファーしたんだよ」と言われまして。確かに類家のような一面があるかもしれないと思い、出演を決めました。
役作りから二朗さんにかなわないと感じた(山田)

――映画『爆弾』は取調室での佐藤さんと山田さんの頭脳戦がとてもスリリングでした。スズキタゴサクも類家も風変わりなキャラクターですが、どのように役を作り上げていきましたか?
佐藤:この映画において、スズキタゴサクは悪役カテゴリに入るキャラクターですが、いわゆる “悪のカリスマ” と言われるキャラクターとは違うんです。彼らの多くは悪の哲学を持っています。
しかし、タゴサクにはそれがない。さらに特殊能力があるわけでもないし、力が強いわけでもない。彼は誰もが心にふたをしてきた感情を表現しているだけ。それは“悪意”です。
誰もが心の中で小さな悪意を抱く瞬間はあると思うんです。「あなたたちだって同じでしょう」と。彼はそう語っているのではないかと考え、その点を意識して演じました。

――山田さんはいかがですか?
山田:二朗さんがおっしゃっているように、映画界には魅力的な悪役が多く、そこから学ぶことは多いと思います。しかし、スズキタゴサクのような“普通のおじさん”の悪役はあまりいないので、とても想像力が必要な役だったのではないでしょうか。
タゴサクはおしゃべりで人懐っこさもあるけれど、心の奥底は深くて黒い。そのどん底から光のある場所を求めていると感じました。僕はそんな難役を演じている二朗さんを見ていたら、自分の役作りは二朗さんほどの高みには達していないと感じてしまいました。
類家は天才肌で頭の回転が速いので、早口でセリフを言うことくらいしか役作りをしていなかったかもしれません。しいて言うならペンをくるくる回すシーンで動きを工夫しましたが。まだまだ二朗さんにはかないません。
芝居は俳優同士のセッションの場でもある(佐藤)

――取調室でのタゴサクと類家のバトルはかなり壮絶な頭脳戦でしたが、例えば撮影合間など、敵役の俳優さんとは会話をしないようにするなど、意識したことはありますか?
佐藤:僕は敵対する相手を演じる俳優さんとも撮影合間にはよく話します。もちろん役の関係性を考えて、できるだけ話さないようにする俳優さんもいらっしゃいますし、人によってやり方があると思いますが、僕と裕貴は、この映画のリハーサルや撮影を通してたくさん話をしました。
芝居は、どのようなシーンでも、基本は俳優同士のセッションだと思うんです。特にこの映画におけるスズキタゴサクと類家の関係性はくせ者同士の対決でもありますが、互いに共鳴している一面もあります。

――確かに、取調室のシーンは、周りの人は口を挟めない、2人だけの精神的にギリギリの戦いという印象がありました。
佐藤:類家と僕が笑い合うシーンがあるのですが、台本には「笑う」とは書かれていないんです。裕貴が笑ったので、僕も笑いながら言った。そこには2人にしか分からない通じ合う瞬間がありました。これぞセッションの醍醐味(だいごみ)ではないかと。こういう芝居は互いに信頼がないと生まれないと思います。
山田:二朗さんとはさまざまなお話をしましたね。撮影合間に一度「二朗さんは自分のお芝居がつまらないと思ったことありますか?」と聞いたことがありました。
佐藤:撮影の直前にね。いきなり何を言い出すのかと(笑)。
山田:僕は最近、自分の芝居に満足できないんです……など、個人的な会話を交わした後、すぐ本番に入り、僕らはタゴサクと類家になり、監督のカットがかかった瞬間、また元に戻りました。撮影現場では、そんなふうに自分と役のスイッチを切り替えながら会話をしていましたね。
佐藤二朗という俳優のすごさを目の前で感じた(山田)
――取調室で対峙(たいじ)するシーンで、お互いの芝居を受け止めて、改めて感じたことはありますか?
佐藤:取調室のシーンは、裕貴だけではなく、染谷将太さん、渡部篤郎さんという素晴らしい俳優らとも芝居をしています。タゴサクは刑事を翻弄し、刑事はタゴサクから爆発する場所を聞き出そうとし、そのやりとりはかなり白熱するのですが、演じている僕としては、芝居対決している意識はなく、一緒に高みに登っていくという感覚でした。
スタッフとキャストが一丸になって作り上げていく撮影の現場では、1人の俳優だけがうまくてもダメなんです。俳優同士が一緒に高いところを目指さないと。この映画の場合「このメンバーなら絶対に大丈夫!」と確信して撮影に臨みました。毎日充実しており、妻に「今日も楽しかったよ」と報告するほどでしたね(笑)。

山田:二朗さんは多くの悪役のスタイルを理解した上で、タゴサクを綿密に分析して表現していました。でも二朗さんは「タゴサクのことがよく分からなかった。分かってはいけないと思った」とおっしゃっていて「分からなくてもあの素晴らしいお芝居ができるのか」と驚きました。
――確かにタゴサクは何を言い出すか分からない、予測不可能な人物ですよね。
山田:二朗さんの表現はとても細かいんですよ。ウワーと大きな声を出したと思ったら、両手で顔を覆ってみたりするなど、細かいこだわりが詰まっています。独特なセリフ回しも含めて、二朗さんの絶妙な芝居を目の前で拝見できて、改めてすごい俳優だと思いました。
佐藤:僕は褒められるのが大好きなので、裕貴、僕を褒めるのに遠慮はいらないよ、どんどん話して(笑)。
永井聡監督を手こずらせた山田裕貴!?

――永井聡監督からは、キャラクターについて演出はあったのでしょうか?
佐藤:キャラクターの内面よりも細かい動きの演出がメインでしたね。「ここは座ったままで」とか「ここは手振りをつけてみたらどうでしょう」などアイデアをいただき、僕も監督の言葉をヒントに演じたりしました。監督ともさまざまなセッションがあり、楽しかったです。
山田:永井監督と僕は、類家の表現方法についてかなり悩みました。適した表現を求めて何パターンも撮り、僕が一番しっくりくる表現を選ばせていただきました。
特に取調室でタゴサクと対峙するシーンでは、タゴサクの周りを歩きながらセリフを言うのは絶対に嫌だったので「僕は椅子に座ったまま、タゴサクと向き合ってセリフを言いたい。椅子から立ち上がりたくないです」と監督にお願いしました。タゴサクとの勝負は類家にとって重要なので、一瞬も彼から目を離したくなかったんです。
でも打ち上げの席で、永井監督から「山田が一番言うことを聞かなかったなあ」と言われました(笑)。
――結果的にいいほうに着地して、緊張感あるスリリングなシーンになりました。
山田:もしかしたら監督に指示された通りにやったほうが面白いシーンになったかもしれませんが、自分としてはベストな芝居ができたと思っています。
芝居をぶつけ合い、高め合える仲間こそ必要

――本作での共演で、互いに俳優として新たな発見はありましたか?
佐藤:裕貴とガッツリ組むのは本作が初めてなのですが、本作で山田裕貴という俳優の素晴らしさを改めて確認できましたね。
天才肌の類家という非常に難しい役を彼ならではの捉え方で演じ切ったことがすごいですし、彼と濃密なセッションをできたことも喜びです。「山田裕貴となら芝居を高め合うことができる!」と改めて思いました。(山田さんに)楽しかったよね。
山田:はい、楽しかったです。二朗さんにそう言っていただけてうれしい。僕も褒められるのは好きなので(笑)。
やはり芝居だけで人を惹きつけることができる二朗さんはすごい俳優だと思いました。すべてをタゴサクにぶつけて生きる。その姿は壮絶でしたし、僕はどこまで類家として生きられたのだろうと考えてしまいました。
俳優の中には、世間の好感度は関係なく「芝居がよければそれがすべて」という考え方の人もいると思います。僕も本作で、誰にどう思われてもいいという気持ちで芝居に没頭し、二朗さんとぶつかり合えたのがとても楽しかったです。同時に「自分はまだまだ弱いな」ということにも気付かせてもらえました。
日本映画を見ることができない? その理由は
――All Aboutでは取材をした方に好きな映画などを伺っているのですが、佐藤さんと山田さんは最近見た映画や思い出の映画などありますか?
佐藤:好きな映画はたくさんあります。松田優作さん主演の『野獣死すべし』やロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノの出演作も大好きです。最近見た作品で好きなのは李相日監督の『怒り』(2016)。配信でやっと見ることができました。俳優も皆さん素晴らしくて、衝撃的でした。
山田:僕は韓国映画『7番房の奇跡』(2014)です。友達に勧められて見たのですが、僕が見た映画史上、一番号泣しました。冤罪で捕らえられた発達障害の父親が娘に会いたくて脱出を試みる……という物語。俳優さんのお芝居がリアルでよかったし、物語も刺さりまくりました。涙が止まらなかったです。
僕は日本映画が見られないんです。なぜかというと悔しくなるから。本当は芝居の勉強にもなるので見なくてはいけないのですが、いいお芝居を見ると悔しくて悔しくて。

佐藤:その気持ちは分かる。僕もかつて裕貴と同じように、日本の俳優たちのいいお芝居に対する嫉妬心があったから。
でもその気持ちは日本アカデミー賞の授賞式に出席したときに変わりましたね。多くの俳優とさまざまなお話をしたのですが、みんな日本映画を愛していて、日本映画の素晴らしさをもっと世界に広めたいと思って活動している。
なんて素晴らしいんだと。僕は自分を恥じました。もっと日本映画を見て、学んで、その素晴らしさを発信していかなければ……。そう思って見たのが『怒り』です。
――そんな思いがあったのですね。
山田:先日、フィンランドのヘルシンキ国際映画祭で開催された『爆弾』のワールドプレミアに参加してきたのですが、自分の出演作をフィンランドの映画ファンに見ていただけてすごくうれしかったし、もっと世界に日本の映画を届けなければと思いました。
そのためにも日本映画を見て学ばなければいけない。問題は「いい芝居を見ると悔しくなる」という自分の幼さですが、その気持ちを乗り越えていきたいと思います。
映画『爆弾』の面白さはスタッフ&キャストの総合力!

――では最後に、完成した映画『爆弾』を見た感想をお願いします。
佐藤:まず原作がとても面白いので、絶対に外せないと思いながら撮影していたのですが、非常に面白く仕上がっていてうれしかったです。
永井監督にも感謝していますし、伊藤沙莉さん、坂東龍汰くんなど、事件現場で奔走してくれた警察官役の方たちや、リアルで迫力あるお芝居を見せてくれた特殊部隊の皆さんなど、スタッフ、キャスト全員の素晴らしい仕事が作品からほとばしっていて、感無量です。本当に自信を持ってオススメできる作品です!

山田:試写で見たとき、自分は「とても面白い映画になった!」と興奮しましたが、皆さんが面白いと思ってくれるのだろうかと少し不安だったんです。でも試写の後、二朗さんが大絶賛されていたのでホッとしました。
僕も本作はスタッフとキャストの総合力が高かったと思います。絶対に見ていただきたい! ただ、この面白さをどう伝えたらいいのか悩むんですよね。
佐藤:人の悪意を問うたり、社会性もあったりしながら、最初から最後までずっと面白い極上のエンターテインメント作品! いろいろな要素が凝縮されているけど、一言で言えば「面白い!」。これに尽きる。
山田:そうですね。あとはこの映画を見てくださった観客の皆さんに、本作の面白さを世の中に伝えていただきたいです。
佐藤:お客さんに映画『爆弾』を育てていただきたい。面白いと思ったら、どんどん拡散してください!
山田裕貴さんのプロフィール
1990年9月18日生まれ。愛知県出身。2011年『海賊戦隊ゴーカイジャー』(テレビ朝日)で俳優デビュー。2024年『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命- / -決戦-』『キングダム 運命の炎』などの演技で第47回日本アカデミー賞話題賞を受賞。近作は『木の上の軍隊』『ベートーヴェン捏造』。最新作は『ちるらん 新撰組鎮魂歌』(2026年放映予定/TBS)。
佐藤二朗さんのプロフィール
1969年5月7日生まれ。愛知県出身。1996年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げして俳優活動をスタートした。以降、映画、ドラマ、舞台と活躍の場を広げている。映画制作にも積極的で、『memo』(2008/監督・脚本・出演)『はるヲうるひと』(2021/監督・脚本・出演)など多彩。『あんのこと』(2024)で第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。最新作は『新解釈・幕末伝』(2025年12月19日公開予定)。
『爆弾』2025年10月31日全国ロードショー
原作:呉勝浩『爆弾』(講談社文庫)
監督:永井聡
出演:山田裕貴、伊藤沙莉、染谷将太、坂東龍汰、寛一郎、片岡千之助、中田青渚、加藤雅也、正名僕蔵、夏川結衣、渡部篤郎、佐藤二朗
(c)呉勝浩/講談社 (c)2025映画『爆弾』製作委員会
執筆者:斎藤 香(映画ガイド)
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