

私たちはなぜ故郷を捨てねばいけなかったのか「地方女子たちの選択」書評
なぜ、私たちはふるさとを出たのか。地方出身で、都会に出たアラサー以上の女性の中には、自らの選択を肯定していいのか、悩んでいる人もいるのではないだろうか。
あの頃、華やかに見えていた都会。大人になってみれば、家賃も飲食物価は高く、その反面給料は、地方より水準が高いとはいえ、都心で華やかに暮らすほどに稼ぐことは難しい現実。だからといってふるさとに戻れるかといえば……。
私たちはいったい、どうすればよかったのだろう。過去を振り返っても「地元に残る」選択はなかったのかもしれないけれど、都会で育ったわけでもない私たちが、今後どう暮らしていくべきかを考えるためにも、地方で暮らし続ける女性の考えを知ることに、意味はあるはずなのだ。
・なぜ私たちは地方を出たかったのか
・都会出身の人が知らない「地方暮らし」のリアル
・地方に戻るべきか、都会で暮らすべきか
■ふるさとを「去らねばいけなかった」私たち
『地方女子たちの選択』(桂書房/上野千鶴子・山内マリコ著)は、北陸出身の2人の女性が共著した。上野千鶴子氏といえば、日本の女性学・ジェンダー研究の第一人者だ。
1948年生まれで、今のアラサー女性とは時代性の異なる青春時代を送っているものの、京大卒でその後東京大学で教鞭を握っていた彼女は、まさにアカデミックエリートな女性の1人だ。本書を共著する山内マリコ氏は、上野氏と同じ富山県出身。1980年生まれの小説家・エッセイストだ。
本書では2人の地方出身女性が、今も富山という一つの地方に生きる女性たちの半生を聞き取り、地方で生きる女性たちが何を考え、何から逃げたかったのか、何を背負ってきたのかを再考していく。
本の序盤では、上野氏、山内氏自身が地方での自らの育ちを振り返る。時代性は違えど、地方出身の女性であれば、シンパシーを感じる箇所も多いことだろう。
ところで、読者によっては「地方ってどこまで?」と気になる人もいるかもしれないが、私は首都圏に住んでいても、働くために育った場所を去る女性が多かった地域は、地方と読んで差し支えないと考える。
私自身も茨城県出身だが、地元に残る職業は製造関係や土木関係の仕事が主だ。進学の際、地元に残ることを考えなかった理由のうち、都会に憧れがあったことも大きかったが、深層心理では「地元に残ってもできる仕事がない」とも感じていた。
そう、地方には、女性の職場が本当に少ないのだ。地元に残って働けている女友達の仕事といえば、看護師、保育士、教師、介護士……手に職の士業以外の人は本当に少ない。飲食業や、地元のショッピングモールでアパレルなどの接客業に従事する女性もいるが、そのほとんどはパート勤務で、結婚して専業主婦になった女性も多い。
あの頃は深く考えていなかった。だけど振り返ってみると、働き続けることを視野に入れた時に、地方を出ない選択がなかったという女性も少なくはないのではないだろうか。私たちは自ら都会に出たのではなく、地方から「出て行かざるを得なかった」のである。
本書でも、地方女子たちが「やりがいのある仕事を見つけられない」ことは、地方から女性が流出する一つの原因になっていると語られている。仕事がないということは、収入が低くなりやすいということだ。だからこそ地方に残る知り合いはフルタイムで働く女性が少ないし、結婚や出産が早い。地方で女性が自立した暮らしを送るのが難しいのは、社会構造の問題だとも指摘されている。
■地方女子が語る生きづらさと希望、地方暮らしの明暗
本書では、今地方で暮らす地方女子たちの語りが、14人分も掲載されている。年代は1959年から2000年生まれまでと幅広く、いずれも富山で暮らす女性たちではあるのだが、共通点が感じられる。
親から求められる像があったり、実家に家父長制の空気感が残っていたり、キャリアか結婚・子育てかの極論を迫られていたり……知り合いの誰かしらから聞いたことがあるような話に加え、アラサー以上の歳上女性たちからは、嫁姑問題、介護問題といった、この先ぶち当たりそうな壁についても語られている。
もちろん、中には地方に残ったことや地方に帰ったことを悔やんでいない女性もいて「ふるさとに帰ることは、決して悪いこととは限らないのかも」という希望も感じさせられる。地方に戻れば、親の援助を受けられる可能性が高く、子育て中の女性には大きな助けとなるだろう。しかし、三世代同居には問題がないとは限らない。
地方で生きる女性たちの語りは、それはそれはリアルだが……それもそのはずだ、だって女性たちは、常に現実を生きているのだから。結婚や出産には「期限」のようなものが付きまとっているように感じることも、仕事と家庭の両立が難しく感じられるのも、多少生まれた時代がズレていても、みんなが思っていることなのだと思うと、安心できる部分もあるかもしれない。
女性たちの語りからは、女性ならではの強さも感じられる。抑圧があったとしても、自己肯定感の高い女性は意地を見せ、求められる自分像を完璧に演じ上げている人もいた。しかし上野氏は「ポテンシャルのある人が、抑圧されない環境にいたら、一体どこまで羽ばたけたんだろうか」とも語る。
私たちは自分でも気づかないうちに、社会構造によって自らの可能性を潰されてしまう可能性があるのかもしれないということだ。
私自身は地方出身者なので、本書を読んで自分の思う「地方らしさ」と重ねてしまう部分もあるのだが、これを読んだ都会出身の女性は、この現状をどう見るのかも気になる。都会にはない一面として捉えるのか、あるいは都会でも、地方と同じく「女性ならではの抑圧を感じる青春時代」があるのだろうか。
■地方か、都会か。居場所をどこに決めるか
「地方女子が感じる生きづらさ」については、地方出身者にとっては非常に共感できる部分が多いだろう。だが、著者の2人は地方から東京に出て、キャリアを獲得したエリートでもある。真に居場所がないと感じているのは、都会に出てきたはいいものの、まだ自分のキャリアを確立できたとも言えない状況にいる地方出身女性たちではないだろうか。
本書でも、地方女子が都会に流れることで、地方と都会、どちらも少子化や未婚化が進むと触れられていた。実際、都会には未婚女性が多いというが、東京ですら出生率は高まらない。
都会で、未婚男性と出会う機会があっても結婚には至らないのであれば、おひとりさまとして強く生きる道を探さざるを得ない。おひとりルートを前向きに捉えられる女性にとってはよい環境ともいえるが、実際、都会の婚活市場は混沌としており、結婚したくてもできない女性も多くいる。
都会は、地方とは違った苦労がある。地方にも、都会にはない苦労がある。では私たちは、何を選択し生きるべきなのだろうか。
地方女子たちの選択を知ることで、地方から出てきた女子たちにとっても、今の自分の現在地と、今後を考えるきっかけとなるだろう。都会に残ってサバイブするか、地方女子たちの語りを参考に、よいUターンを望むか。地方から出てきた女性にとっても、都会で生まれ育った女性にとっても、今後の人生を考えるきっかけになるだろう。
(ミクニシオリ)
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