
重圧がなかったわけがない。阪神は28日、広島との開幕戦(マツダ)で4―0と勝利。指揮官としてのデビュー戦を鮮やかな完封リレーで決めた阪神・藤川球児監督(44)は、帰りのバスに乗り込む手前で安どの表情と照れ笑いを見せた。
「おめでとうも何も、僕は何もしてないですから」と平静を装った「第36代虎の将」は初陣で絶好のスタートを切った。
前日会見で今季のキーマンに指名した佐藤輝が先制1号2ランを放てば、昨年11月に開幕投手に指名した村上が8回2/3を135球、無失点の今季初勝利。最後は守護神の岩崎がセーブシチュエーションで登板し「1S」を決めた。殊勲者に気持ちよく「1」の数字が記録されての勝利だ。
「結束力がまた高まった。選手たちが立派だなと。いい初日になった。自然体でできたし、本当に何もないです。選手たちが素晴らしかった。僕個人は何もしてない」。指揮官は喜びを抑えつつも表情は自然とほころんだ。
球団として開幕戦での完封勝利は35年前、1990年4月7日・広島戦(広島市民)以来。その試合では高知商の先輩で選手とコーチとしてともに戦った中西清起氏が1人で投げ切って完封した。ただ、そういった記録を藤川監督は意識してはいなかった。
4点リードの9回二死一、三塁で先発・村上から岩崎にリレーしたのも計算づく。次打者の秋山と村上の相性(昨季は24打数10安打、打率4割1分7厘)と球数を考慮し、計画的に継投した。
現役時代の記念球などは「1球もないんです」と話す指揮官。監督初勝利のウイニングボールも「村上に返します」と返納しようと試みたものの固辞され、手元に残った。自分で試合を締めて手にしたわけではないボール。信じて起用した選手たちから贈られた記念球こそ、藤川監督の宝にすべきだろう。