《異業種に学ぶ》カプセルトイメーカーのクオリア ぶれない独自企画や動画で売り上げ急伸
カプセルトイメーカーのクオリア(東京)は、オリジナルキャラクターの伸長と、売り場と連携した施策で売り上げを伸ばしている。21年3月期に7億円だった売り上げは24年3月期には25億円へと急拡大。カプセルトイ市場の成長が追い風となる中、ぶれない独自企画と動画発信、販売戦略が実っている。
(森田桃子)
独自のキャラ強化
クオリアは、小川勇矢代表が「コップのフチ子」で知られる奇譚クラブ(東京)から独立し、16年に立ち上げた。市場にアニメなどの既存キャラクターや、人気クリエイターとの協業物が多く出回る中、同社では自社オリジナルのキャラクター、いわゆる〝ノンキャラ〟物のヒットが売り上げを押し上げている。
創業当時はクリエイター物が多かったが、「作家自身の影響力が売れ行きを左右する。自社そのものの影響力を高めたい」として19年に方針を転換、独自のキャラクター開発に取り組んだ。自社の影響力が高まれば、協業でも更なる相乗効果が得られるはずだと考えた。
以降、「シャキッとしな菜(さい)!」「ゴリランドセル」など、次々にヒット商品を生み出してきた。ヒットの秘訣(ひけつ)は「面白さと共感」だ。日常のささいな言葉遊びや気付きが着想源。そこから、ぬいぐるみなのか、フィギュアなのか、カプセルレスなのか、など具体化しながら求められているものに照準を合わせていき、ヒット商品に仕上げる。ハイクオリティーな造形も肝だ。「一目で(意味が)わかる」、共感の形に落とし込めるのは、小川代表自ら別会社として造形会社を経営しているからこそだ。
ファン作りに注力
専門店と連携した商品開発で、人気キャラクターも育てる。累計400万個以上売れているぬいぐるみシリーズ「にっこりーノ」は、ハピネットが運営するカプセルトイ専門店「ガシャココ」の限定商品として19年に開発。カプセルトイにぬいぐるみが少ないことに目をつけた。「初めは名前もない、ただのぬいぐるみ。でも人気が出るにつれ名前をつけてくれという要望も増えた」ため〝にっこりーノ〟と命名してキャラクター化。
第1弾は、おにぎりやソーセージなどお弁当の具材をぬいぐるみにした「お弁当のぬいぐるみ」だ。好反応を受け、継続して「おでん」「調味料」「海の生き物」と次々打ち出しファンを増やした。現在80種類以上にのぼるシリーズとなり、コンテンツの一つとして確立された。売り場を絞り継続して販売することで、コアなファンを育てられたことが奏功した。ハピネットでは他社のカプセルトイ専門店と差別化した商品で、来店動機を創出できた。
キャラクター人気投票のほか、2月23日からは駅ナカ立地でカプセルトイ以外の商品50種類も販売するイベント「にっこりーノパーク」を開催した。「初めから当てにいかず、売り場の反応を見ながら継続し、楽しんでもらえそうな仕掛け」をタイミングよく打ったことがヒットにつながった。
19年から、動画配信もしている。小川代表は「チャラ社長」、広報のしきさんは「しろメガネ」と名乗り、新作をPRする。投稿数は計600回を超え、会社のファンもついてきた。「どのメーカーが作ったものか」という意識が共有されにくいカプセルトイメーカーの中でも認知を広め、存在価値を高めている。
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