

年間700杯以上・ラーメン官僚が考察、ここ30年で油そばが一大ジャンルを築いた理由
日本全国のラーメン店の発掘と紹介をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンを食べ続け、生涯実食杯数は21,000杯超という日本屈指のラーメンフリーク、通称「ラーメン官僚」こと、かずあっきぃ氏がラーメンについて語り尽くす短期連載。第6シーズンでは「油そば、まぜそばの歴史」について2回にわけて語ります。(前後編の前編)
ラーメン愛好家の間でしばしば取り上げられるテーマのひとつに、「油そばとまぜそばの違いは何か」というものがあります。結論から言えば、「油そば」や「まぜそば」に明確な定義が存在するわけではなく、基本的には呼び方の違いにすぎません。いずれも、スープを使わない「汁なしラーメン」の一種であり、人によっては「スープOFFラーメン(スープがないラーメン)」と呼ぶこともあります。
現在では、さまざまなスタイルが存在する「汁なしラーメン」ですが、その原型とされるのが、武蔵野エリア発祥の油そば(「武蔵野系油そば」)です。「武蔵野系油そば」は、油とカエシ(醤油ダレ)を麺に絡め、最小限のトッピングを加えただけの、比較的シンプルな構成が特徴。もともとは中華そば店の賄い料理として生まれたと言われています。
「武蔵野系油そば」の発祥については、諸説あります。最もよく知られているのが、武蔵境の『珍珍亭』が元祖だという説ですが、国立の『三幸』などがルーツだという説もあります。『珍珍亭』であれ『三幸』であれ、中央線沿線の武蔵野エリアに店舗を構える老舗であり、いずれにせよ、油そばは、当初は東京ローカルのご当地麺として始まったものだと言えるでしょう。
それが全国へと広まり、「油そば」「まぜそば」など、様々な形へと姿を変えていくのですが、源流である「武蔵野系油そば」は、表メニューで中華そばを出している店の賄いから生まれた、本当にシンプルな食べ物だったのです。
こうした武蔵野系の「油そば」をルーツにしながら、2000年前後には「がっつり系ラーメンブーム」が勃発し、「汁なし」ジャンルにも大きな変化が訪れました。大量の野菜や背脂、マヨネーズといったインパクトが強いトッピングを組み合わせた、「ジャンクさを売りにした汁なしラーメン」が登場し、熱狂的なファンを生み出していったのです。
その流れの中で特に重要な役割を果たしたのが、『ジャンクガレッジ』の存在です。同店は元々、東京都・大崎にあった集合ラーメン施設「ラーメンアパートメント」内でスタートしたブランドでしたが、後に埼玉県・東大宮へと移転し、店舗展開を本格化させました。同店では、ジャンク系の汁なしラーメンを「まぜそば」として打ち出し、以降「まぜそば」は、そのイメージで固定化されていくこととなります。現在では「まぜそば」という言葉そのものが、ボリューム感や中毒性のある味わいを連想させるようになりましたが、そのイメージづくりに最も大きく貢献したのが、『ジャンクガレッジ』だと言えるでしょう。
と、このように、2025年現在、「まぜそば」は、野菜、背脂等のトッピングを大量に盛り付けた、がっつり系ラーメンの汁なしバージョンのようなものだと思われている節がありますが、各店舗における「まぜそば」の使い方などを見ると、必ずしも、まぜそば=がっつり系、油そば=シンプル、という考え方で統一されているわけではありません。「油そば(まぜそば)」というメニュー標記を用いている店舗もあるくらいで、店舗ごとに「まぜそば」、「油そば」のニュアンスや範囲が異なるのが実情です。
また、あくまで個人的な印象ですが、近年「汁なし」と「ラーメン」との境界が随分、曖昧になってきているように感じます。冒頭でも述べたように、「まぜそば」や「油そば」は本来、「スープのないラーメン」とされていますが、実はこれほど、「口にするのは簡単でも、言葉で説明するのが難しい」食べ物はないと感じています。
その理由は、汁なしとして提供されているメニューの中に、実はスープやスープに近い液体(出汁、粘度のあるタレ等)が含まれているものが少なくないからです。この点は一種の矛盾であり、個人的にはあまり深く触れたくないところではありますが、今回は、あえてその実情を語ろうと思います。
例えば、東京・東小金井『宝華』の「宝そば」は、スープがしっかり入った一杯ですが、ジャンルとしては油そばの一種に分類されています。また、神奈川・横須賀にある担々麺専門店の名店『麺山椒』が提供する「汁なし担々麺」も、同様にスープを含みながらも、品名が示すとおり、「汁なし」のカテゴリーに分類されています。つまり、スープやそれに類する液体が含まれていてもなお、「油そば」や「まぜそば」と呼ばれることがあるのです。
では、スープが入っている場合、その分量の多寡によって「ラーメン(汁あり)」と線引きすることができるのか。結論から言えば、それもまた、絶対的な基準にはなりません。
例えば、愛知県・瀬戸市の『麺座かたぶつ』の「どろにぼ」などは、「汁あり」と遜色ない分量のスープを用いながらも、店側は「超濃厚まぜそば」と位置づけています。さらに、大阪府・大阪市の『ふく流らーめん轍』が提供する「マゼニボジャンキー」も、強烈な煮干しスープを大量に湛えつつ、あくまで「まぜそば」として供されています。つまり、「油そば」や「まぜそば」という食べ物の範囲が、あまりに拡張されすぎたがゆえに、スープ量の多寡をもってしても、確実に仕分けられないのが現状なのです。
さらに言えば、油そばやまぜそばについて語る際に、麺に絡む液体を「スープ」と呼ぶべきか、「ソース」と表現するのが適切か、それとも「タレと油」と分けて説明したほうが良いのか、その区別も実に困難です。これは、「汁なし」を語る者にとっては、迷宮に迷い込んだかのように悩ましい問題でもあります。
話を、油そばの進化に戻しましょう。もともと中華そば店の賄い料理として誕生したとされる「武蔵野系油そば」は、「賄い」だという発祥経緯を色濃く反映し、その構成は実にシンプルです。あらかじめ丼にタレと油がセットされ、好みに応じて卓上のお酢やラー油を加え、全体を混ぜ合わせて食べる。これが「武蔵野系油そば」のスタンダードなスタイルです。
しかし、汁なし文化が成熟した今、事情は大きく変わりつつあります。提供時に、あらかじめ店主の手で麺と具材が丁寧に和えられ、味の設計が完成された状態で供されるスタイルがひとつの「型」として確立されました。これにより、卓上調味料に頼ることなく、最初のひと口目から緻密に構築された味わいが楽しめる「汁なし」が、当たり前の存在となっています。
また、「汁なし」でありながら、器の底に少量のスープや出汁を潜ませる手法も定着しています。粘性のあるタレ、ソースと、スープのうま味とを融合させることで、「汁なし」に、ラーメンのエッセンスを織り込んだスタイルです。
さらに、「武蔵野系油そば」とはまったく異なるルーツを持つ「汁なし」も、今や、ひとつの系譜として確立されつつあります。その代表格が「汁なし担々麺」です。
元々、担々麺は、発祥の地中国・四川省においてはスープのない「汁なし」が本来のスタイルでした。このオリジナルの担々麺の形式を踏襲しながら、日本において独自のアレンジを加えることで生まれたのが「汁なし担々麺」です。つまり、「汁なし担々麺」は、油そばとは全く異なる文化的背景を持ちながら、日本の「汁なし麺文化」の一翼を担う存在として定着しているのです。
愛知県・名古屋のご当地グルメ「なごやめし」の代表格であり、全国的にも知られる「台湾まぜそば」も、独特の「汁なし麺文化」のなかで確固たる地位を築いています。
「台湾まぜそば」は、同じく名古屋発のご当地麺「台湾ラーメン」を「汁なし」へとアレンジしたもの。具体的には、「台湾ラーメン」に用いられる台湾ミンチをスープOFFの状態で麺に和えたものです。ちなみに、「台湾まぜそば」は、名古屋の実力店『麺屋はなび』の店主が賄いとして考案。その独創的な味わいから、今では全国各地で食される名品となりました。
このように、汁なし麺の世界は単なる派生にとどまらず、地域の特色や既存のラーメン文化と複雑に絡み合いながら、多様に進化しているのです。
最後に、なぜ「汁なし」がラーメングルメの中で一大ジャンルを築き得たのかについて、私見を述べたいと思います。
「汁なし」が一大ジャンルとなった最大の要因は、圧倒的な自由度の高さにあると考えています。スープの制約を受けずに、タレ、油、トッピング等を自在にアレンジできることにより、シンプルなものから「がっつり系」、「台湾まぜそば」、「汁なし担々麺」に至るまで、多彩なバリエーションが広がりました。こうした多様性が、食べ手の幅広い嗜好に応え、結果的に、「汁なし」の裾野拡大と人気ジャンル化につながっています。
明確な定義がないがゆえに、自由な発想で進化し続ける「汁なし」。その魅力は、さまざまなラーメンの中でも際立ったものだと言えるでしょう。
構成/大泉りか
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