「マウンテンドクター」第8話より

<マウンテンドクター>ドラマPが絶賛する杉野遥亮と向井康二の迫真の演技「本当に素晴らしかった」

2024.08.31 12:00
「マウンテンドクター」第8話より

杉野遥亮が主演するドラマ「マウンテンドクター」(毎週月曜夜10:00-10:54、カンテレ・フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)が現在放送中。本作は、信濃総合病院の山岳医療の現場に放り込まれた青年医師・宮本歩(杉野)が、さまざまな思いを抱えた患者や医療従事者たちと触れ合い、現実と向き合いながら成長していく姿を、壮大なスケール感で描く山岳医療ドラマ。このたび、WEBザテレビジョンでは近藤匡プロデューサーにインタビューを実施。制作に込めた思いや、俳優陣の演技、そして後半の見どころを聞いた。

視聴者からの反響に手応え

――既に第8話まで放送されていますが、作品の反響をどのように受け止めていらっしゃいますか。

僕は「マウンテンドクター」をハラハラしたり、スカッとしたり、感動したりする、エンターテインメントを軸にした作品にしたかったんです。だからSNSで「泣いてしまった」などという反応を見ると、しっかりと届いているんだなと手応えを感じています。「山の映像が綺麗」と言っていただけることも多く、長野県を舞台に、長野県でロケをした甲斐がありました。うれしいですね。

――山の景色が美しい分、ロケは大変だったのではないでしょうか。

俳優部と現場のスタッフには、すごく負担を強いてしまっていると思います…。でも過酷な分、チームワークは高まりました。自然が相手なので、どうしてもスケジュール通りにいかなくて。1話の最後のシーンで唐松岳に登ったのですが、5時間かけて目的地に着いたら2メートル先も見えない雲の中。その状況で2時間待って、奇跡的に10分間だけ松本平野が見下ろせる絶景になったんです。急いでドローンを飛ばして、準備をして、お芝居をして、10分で撮り切った。あの一体感は、印象深かったですね。青春って感じでした(笑)。

リアルな描写に込めた思い

――山と医療というのは、新しい切り口ですよね。企画の意図というのは?

最初は、シンプルに山で医師が人を救うカッコいいドラマを作りたいと思っていたんです。でも実際に山岳医療に携わる先生たちにお話を聞いたら、僕の考えは浅はかだったとわかったから、実際の山岳医療現場や山岳救助現場や登山ということそのものの大変なところを全部ちゃんとに見せようと舵を切り直したんです。

なので、その部分でのリアルさにはこだわりました。今のテレビドラマって、あまりグロテスクなものは見せないようにしていると思います。賛否両論あると思いますが、「マウンテンドクター」では、山で負傷した傷や血の色、血の流れ方まで、見た人に「痛そうで怖い」と思われるくらいリアルに近づけて作っています。ただ「山が綺麗」というだけで山に来てもらっては困る。なめた気持ちで来たら命を落とす場所であることをちゃんと知ってほしいという思いからです。

――実際に動き出してから、見せ方が変わっていったんですね。

そうですね。「ここまでちゃんと見せなきゃいけない」というリアルと、僕らがエンターテインメントとして見せたいけれど「これはやっちゃダメだ」という境界をすごく細かく相談しながら進めていきました。

――そんな中で、エンターテインメント性の高い作品を作るのに大事なことって何でしょうか。

エンターテインメントに寄せるために壮大なことや劇的なことをやりすぎても、それは制作側のエゴでしかなくて、視聴者には見透かされてしまうと思うんです。どんなにエンターテインメントな要素が強くても、逆に作品性が高くても、一番大事なのは、キャラクターがちゃんと生きているかだと思います。

宮本歩に入り込む杉野遥亮の芝居

――主たるキャラクターとなるのが、杉野遥亮さん演じる若い山岳医・宮本歩と、大森南朋さん演じるベテラン山岳医・江森岳人です。ドラマの前半は、宮本先生と江森先生との考え方の乖離が中心に描かれていましたが、杉野さん、大森さんはどんな俳優さんですか。

僕はまだドラマのキャリアが浅いこともあって、脚本という二次元でキャラクターに与えたセリフや見解が、お芝居という三次元になると、しっくりこない場面が何度かあって。そんなときは、キャラクターを深く理解している杉野くんや大森さんの提案に助けられることが多々ありました。

大森さんは、懐が深い。江森先生というキャラクターをご自身でしっかり作った上で、こちらの意図を現場ですり合わせてくださいます。第6話くらいまでの江森先生は度を越えたくらい頑なだけれど、「山に復讐する」という意味がわかった第7話以降は、人間味が出てくる。その違いを見てほしいですね。

杉野くんは、本当に宮本歩になってしまっていると思えるくらい、入り込んでいますね。オフの時のぽわんとした杉野くんから、「今、歩だな」と変わるのがわかる。脚本の中にある歩のジレンマや壁を、本当に追体験してくれている気がしています。そういう生身のお芝居を見せてもらうと、「杉野くんが歩になれるセリフを作らなきゃ」と制作チームの気合が入りますね。そんな2人がぶつかり合って、どう認め合っていくかが後半の見どころになっています。

――ぶつかり合いの裏には、それぞれの抱えている想いがあります。山岳医療という主軸だけでなく、登場人物それぞれの家族との関係というプライベートな側面を描いているのも「マウンテンドクター」の特徴ではないでしょうか。

最初に主人公・宮本歩のキャラクターをどうするか考えたとき、天才スーパードクターと、生身のドクターという2つが思い浮かびました。でもここでエンターテインメントと天才ドクターを掛け合わせたら、見たことのある話に山の絵があるだけの作品になってしまう。だから主人公は、僕たちと同じ地平線上に立っている人にしたいと思ったんです。僕もそうだけれど、お医者さんのバックグラウンドってあまり考えたことないですよね。でも医療従事者の方にも家族がいて、恋人がいて、それぞれに悩みがある。それもしっかりと見せないと、同じ地平線上に立つキャラクターにならないなと考えたんです。

向井康二の芝居に寄せる期待

――MMTメンバーだけでなく、歩の同級生・小松真吾(向井康二)の家族も登場しますが、Snow Man・向井康二さんがバツイチ子持ちの焼き鳥や店主という設定には驚かされました。向井さんのキャスティングの経緯は?

うちの幼稚園と小学生の子どもが、マッサマンが大好きなんですよ(笑)。だから向井くんのことは多くの番組で拝見していました。そして弊社の「リビングの松永さん」(2024年、カンテレ・フジテレビ系)に出演されていたのを見て、きっとこの方は繊細に物事を考えている人なんじゃないかなと思ったんです。

本作で演じていただいた真吾は、MMTの歩と典子(岡崎紗絵)の同級生で、明るく2人の悩みをきいてくれる存在。向井くんから容易に想像できる役ですよね。でも実は、歩を一番理解していて背中をポンと押してくれる存在で、離れて暮らす息子がいるという事情も抱えている。明るいだけじゃないキャラクターを演じることで、僕も意識していなかった向井くんの人間性、すごく繊細で、周りを気にしてくれてる部分がお芝居に出てくるんじゃないかと思って相談させていただきました。

――実際の向井さんの演技は、いかがでしたか。

向井くんは現場で「今の大丈夫だったかな?」と聞いてくるのですが、そんな心配はいらないくらい良い表情をするんですよ。“お芝居はテクニックだけじゃない”と僕は思う時があるのですが、言葉を発するときの表情、笑い顔だったり、怒った顔だったりが魅力的な人が“お芝居ができる人”だという思いがあります。向井くんは、その表情がナチュラルで、すごくいいんです。ビールを出しながら歩に一言をかける時の表情は、監督がいくら説明してもできない人には一生できないかもしれない。でも、向井くんは、説明せずともそのナチュラルな優しい表情ができちゃう。 もしかしたら本人がまだ気付いていないのかもしれないけれど、本当に色々なシーンで素晴らしい表情をされるんです。だからもっとお芝居をしたらいいなと思うし、また別の作品でご一緒したいなと思っています。

――第8話で真吾が歩に怒りをぶつけるシーンは印象的でした。

「こんな向井さんのお芝居、今まで誰も見たことないだろう」というくらいのお芝居でした。本当に素晴らしかった。撮影がスタートしたときから、杉野くんと向井くんが、お互いの感情をぶつけ合うこのシーンを楽しみにしていたんです。でもお互いがお互いに「楽しみだね」と言うわけではなく、双方が僕に「実はちょっと楽しみだ」と言ってくる(笑)。2人はずっと焼き鳥屋での楽しいお芝居をしながら、第8話に向かって関係性を作り上げていました。だから緊張感を持って第8話に臨めたら、すごくいいお芝居をしてくれる予感はありました。監督の撮り方や演出もすごく良かったと思います。ピークポイントで、ドンって破裂するみたいなお芝居をした向井くんと、それを受け止める杉野くん。見てくださる人も圧倒されるシーンになったんじゃないかなと思います。

――そんなシリアスな一面もありつつ、向井さんは現場のムードメーカーだったのでは?

そうですね。向井くんがいるから現場が明るくなるし、みんながノッてお芝居ができるし。スタッフにも声をかけてくれて、素晴らしい人だと思いました。

印象的だったシーンは「2度と見られないんじゃないかと思えるもの」

――ここまでで印象に残ってるシーンを挙げるとしたら?

この第8話の歩と真吾のやり取り、冒頭にお話した第1話の唐松岳、そして第5話の最後で宇田(蛍雪次朗)が亡くなったシーンですね。宇田は歩にとって山岳診療科の最初の患者さんで、思い入れもあるし関係性もできていた。彼の死を自分の判断ミスのせいじゃないかと悔やむことになるのですが、宇田が山小屋から運ばれてからの一連の杉野くんのお芝居は、2度と見られないんじゃないかと思えるものでした。大切な人を亡くしたくないという気迫がすごくて、印象に残っています。だからそのお芝居をしっかりと映像として仕上げて、視聴者にお届けできないとダメだなとこちら側が思いました。

――ここから最終回までの見どころを教えてください。

宮本歩という若い山岳医と、江森岳人というベテランの山岳医。相容れず反発するところがある2人だけれど、行きつくところは一緒なんです。ずっと見てくださってた方にとっては、「2人はマインドは違うけれど、ある点に対しては認め合って人を救おうと奮闘しているんだな」と思っていただけるはずだし、そこが、心温まる要素になるんじゃないでしょうか。そんな中、ここから歩にも江森先生にもMMTにもそれぞれの困難が待ち受けます。

――えっ、そうなんですか!

歩と江森先生の関係性がどのような最期を迎えるのかも楽しみにしていただきたいですね。

――江森先生に温かな心が取り戻されることを期待しています。

はい。しっかりと素敵な江森先生になっていくと思いますのでご期待ください。

◆取材・文=坂本ゆかり

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