なぜ今の政治家はなぜ物足りないのか? 田中角栄の言葉が人を惹きつけた理由
現在、政治の世界は深刻な閉塞感にいなまされている。為政者のリーダーシップが問われる中、改めて注目が集まっているのが田中角栄の突破力とカリスマ性だ。死後30年以上が経っているのに、なぜ人々は角栄に惹きつけられてやまないのか? 混迷を極める政界を救うヒントがそこには眠っているのではないか? 『甦れ 田中角栄 人が動く、人を動かす誰でも分かる「リーダー学」入門』(日本ジャーナル出版)を上梓した小林吉弥氏に解説してもらった。(前後編の後編)
田中角栄は毀誉褒貶相半ばする政治家だった。だが、強烈な個性とカリスマ性を持っていたことは否定しようがない事実。特にその“言葉”には抜群の説得力があり、今もなお角栄の残した名言・格言は繰り返し取り上げられている。永田町で50年以上も政治取材を続ける角栄研究の第一人者・小林吉弥氏は「単に弁が立つということではない」としながら、「最終的には人間の深いところから発するメッセージがあるかどうかという問題になる」と角栄の“人を惹きつける力”について再定義した。
「角栄のスピーチ力がよく取り沙汰されるけど、本人としては別に大したことを言っているつもりはない。あれは彼の心の叫びなんです。作られた言葉じゃないから、我々の心に響くわけです。今の政治家みたいに用意されたメモを読むだけなんていうのとはワケが違う」
角栄は人前で話をする際に“数字”と“歴史的な裏付け”を必ず入れた。そこに飾っていない自分自身の言葉を加えていくのが基本形。演説とは「演じて説く」と書くが、角栄の話術はそれを超えているのが最大の特徴と小林氏は指摘する。
「もし角栄の話術を参考にしようと思ったら、上っ面だけ真似しようとしてもダメ。まずは自分が本音で生きているかどうか、そこが問われるわけです。自分の人生を投影させた話を展開するのが角栄流。ましてや政治家なんて本音を隠す人がほとんどだから、なおさら角栄は目立つ存在になっていくわけです」
忙しい職務の合間を縫い、とにかく人と会って対話することを大事にした角栄。人脈こそが最大の武器であり、財産だった。ところが今は時代も変わり、職場でも在宅ワークやリモート会議が当たり前になっている。“飲みニケーション”というフレーズも死語になりつつあるのではないか。濃厚な人間関係が築きづらくなっているのは間違いない。
「本来、人間の信頼関係というのは面と向かって話しながら、相手の表情を読み、その言葉を咀嚼し、会話を続ける中で成立するもの。サラリーマン社会だって今は本音を吐露しないし、裸でぶつからなくなっている。たしかにそういうほうがトラブルは起きないのかもしれない。でも人間の根底に“郷愁”みたいなものがあって、会社でも社会でもどこかで本音的なものを求める気持ちがあるんでしょう。その代表格が角栄だということであって」
今の10~20代の若者が角栄の魅力を理解するのは少し難しいかもしれない。旧来あった日本の家族像が消滅してしまったため、角栄の持つ“父親性”が理解しづらくなっているからだ。角栄は良くも悪くも日本の親父っぽい面がある人物だった。
「身体を張って家族を守る……つまり政治家として国民を守る。そういった気概は確実に持っていました。自主外交、石油の問題、魚の問題、食料安全保障……いろんな面で身体は張っていましたよ。角栄以降の政権が果たして同じだけの覚悟を持っていたかというと、今の岸田文雄首相に至るまで『これだ!』という人物は見当たらないんですよね。それは、どうしてなのか? おそらく実行力に自信がないからだと思う」 父親としての角栄は、厳しく突き放すだけでなく、どこか人間臭くて憎めないところがあった。たとえ相手が年下であっても、「すまん。昨日は俺が間違えていた」と謝ることもできる素直さは多くの関係者が認めるところ。存在自体が親しみやすいので、幅広い層から人気を集めたのだろう。
「自分の才覚だけで底辺からのし上がってきたという自信の裏付けがあるんでしょうね。ある意味では今よりも学歴が重んじられた時代に、高等小学校しか出ていなかったわけで(本人は中央工学校を最終学歴と主張)。やっぱり学歴コンプレックスは強烈にあったと思う。社会に出てからも、専門学校にいくつも通いながら必死に学を身につけようとしていましたし」
往年の角栄は、大蔵省などの高級官僚の前に出るとメラメラとした敵愾心を隠そうともしなかったという。「こいつらに負けてたまるか。お前らは恵まれた環境の中で有名大学まで進んだのかもだけど、こっちは泥水をすすりながら這い上がってきたんだぞ」という負けじ魂があったことは想像に難くない。二世議員、三世議員ばかりになった現在の自民党とは正反対のメンタリティといっていい。
「そのへんは愛弟子の小沢一郎と比較するとわかりやすい。彼の父は安保闘争で活躍した小沢佐重喜。大物政治家です。一方の角栄は父親が博打ばかりやって、母親はひたすら田んぼで汗水垂らして働き、それでお金がなくなると親戚にお金を借りるような生活。そこで罵声を浴びながら感性が磨かれていったたわけです。もちろん貧乏な育ち方をしても全員が角栄みたいになれるわけじゃないけど、そこは持って生まれた感受性の強さがプラスに作用したということなんだと思う」
一方、小沢は自民党を2回も下野させ、“壊し屋”として剛腕をふるったが、現在は高齢も手伝ってか求心力を失いつつある。小林氏は「彼は他人へのフォローが苦手なタイプ。すぐ切って捨てる。だから人がついてこないのでは」と指摘した。
「私が永田町取材をスタートさせたとき、角栄は幹事長でした。55年体制まっただ中だったので、当時の自民党は社会党と激しく対立していたものです。ところが驚いたことに、そんな社会党の中からも『自民党でもあの人だけは特別』『角さんが言うんじゃしょうがない』と評価する声が少なからずあった。まるで“影の同志”みたいなものです。敵の陣営をも味方にできたのは、角栄に対立陣営とも手を握れる人間的な魅力があったからに他ならない」
こうしたスケールの大きな政治家を求める国民の声が果たして永田町に届いているのか? 挫折を繰り返してもすぐに立ち直るタフネスぶり、清濁併せ呑むような人間的な臭み、大局的な角度から指針を決めていく政治的センス……。小林氏ならずとも「今の政治家は平板化していて物足りない」と嘆きたくなるはずだ。混迷を極めて閉塞状況にある令和の世だからこそ、“コンピューター付きブルドーザー”と呼ばれた角栄のパワフルな方法論が改めて求められているのかもしれない。
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