嘘でもいい、あなたに触れてほしいから――偽装の恋<イケパラ☆シェアハウス栗原聡一編 第4話>

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【モデルプレス×KADOKAWA共同企画/独占連載】天才シェフはクールな常識人って、いきなり偽装結婚ですか? 天才シェフの栗原聡一は、いきなり偽装結婚を持ちかける!あることから恋愛沙汰にうんざりしていた有莉子は聡一の申し出を受け入れる。あくまでも偽装の恋、偽りの婚約者なのにやさしくフォローし守ってくれる聡一に惹かれドキドキしてしまう有莉子の前にある男が!
嘘でもいい、あなたに触れてほしいから――偽装の恋<イケパラ☆シェアハウス栗原聡一編 第4話> (C)深志美由紀 (C)じゃこ兵衛
嘘でもいい、あなたに触れてほしいから――偽装の恋<イケパラ☆シェアハウス栗原聡一編 第4話> (C)深志美由紀 (C)じゃこ兵衛

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嘘でもいい、あなたに触れてほしいから――偽装の恋<イケパラ☆シェアハウス栗原聡一編 第4話>

「おい、葵(あおい)。いい加減にしろよ」  

冗談ではなく怒った様子で、聡一(そういち)さんがぶぜんと言い放った。

「はいはい、ごめんなさい。もうしないわ。でもアンタが悪いのよ、どうせまだ手も出してないんでしょ?」  

挑発するように言い返す葵さん。ふたりの言い争いが、私の耳を右から左へと通り抜けていく。  

――私、いま、なんて思った……?

『聡一さんじゃなくちゃダメ』、そう思ったの?

「……」  

思わず、ごくりと喉が鳴った。 そんなこと、思ってはダメなのだ。だって、これは偽装結婚なんだから。  

彼は私のことが好きなわけではないのだ。お互いの利益のためにしかたなく結婚してくれるだけで――だから、本当に好きになんかなってはいけない。  

そんなこと、わかってるのに。

「手って……あたりまえだろう、おまえと一緒にするな」  

聡一さんはあきれ声で言う。

「そう? 愛してたらセックスしたいって思うのは、あたりまえのことじゃない。自然な営みだわよ」  

――私は、聡一さんとキスしたいと思っているんだろうか。その先も?  

聡一さんは……?  

いいや、そんなこと、思ってもいないに違いない。

「アンタ、本当に有莉子(ありこ)ちゃんを愛してるの?」  

さらに言いつのる葵さんに、彼は一瞬だけ言葉を飲んだ。

「あ、葵さん。もう……」  

思わず止めに入った私を、聡一さんの手が制する。  

彼の表情は真剣だった。

「あたりまえだ」  

ああ、と思う。私は聡一さんに、これからずっと嘘を吐かせることになるのだろうか。

「俺は有莉子を愛している」  

その言葉を聞いた瞬間、どうしようもなく胸が痛んだ。  

それが真実だったらどれだけいいか。そう思っている自分に、私は気づいてしまった。  

それから、表向きは平穏な日々が過ぎた。  

聡一さんと私の仲はうまくいっていると言っていいと思う。あいかわらず一緒にお料理をしたり、買い物をしたり。ときには、まわりに疑われないようにふたりで部屋ですごすこともあった。

「わあ、すごくいい香り……!」  

キノコのキッシュをひとくち口に入れて、その深いうま味に私は感嘆の声をもらす。

「うまいだろ。秋の新メニューだ」  

黒いコックコート姿の聡一さんが、グラスに赤ワインを注いでくれながらほほえんだ。  

私は、聡一さんがシェフを勤めるレストラン、『Bonbons maison』を訪れていた。白い壁にチョコレートのようなドア、まるでお菓子の家のようなかわいらしいお店だ。

「はい! こんなにおいしいお料理、初めて食べました。盛りつけもきれいで、なんだか食べちゃうのがもったいないみたい……」  

牡蠣のアミューズブーシュ、キノコのキッシュ、メインは鳩のロースト。どのお料理も、私にはもったいないほどすばらしい。  

――それに。  客席からキッチンが見えるこのトランでは、聡一さんが忙しく立ち働いている姿をよく見ることができた。  

家にいるときとは少し違う、真剣な表情で料理にとり組む彼の姿に私の胸はいやがうえにもときめいてしまう。

「シェフの婚約者がいらっしゃるというので、腕によりをかけました」  

最後、デザートのプレートを運んできてくれたウェイターさんはそう言って私にほほえんだ。

「そんな……」  

私は恐縮してうつむいてしまう。  

そうなのだ。今日ここにきたのは、聡一さんに私をお店のスタッフに紹介したいと言われたからだった。  

いよいよ、私たちの婚約は現実的になってきている。  

――私たち、本当にこのまま結婚しちゃうのかな……。  

その事実が重く胸にのしかかってきて、私は内心少しだけ心穏やかではなかった。  

聡一さんは、最初にした約束どおり私に指一本触れてこない。  

――これで、本当にいいの?  

私のことを好きじゃないのに、結婚するなんて。  

けれど、私にはもう彼を手放すことはできそうにない。  

嘘でもいい、一緒にいてほしい――そう思ってしまう。

「今日はありがとうございました。本当においしかったです。それに……みなさんに紹介していただいちゃって……」  

たとえ偽装だとしても、聡一さんの世界に交わることができて私は嬉しかった。  

レストランから帰り、私たちは聡一さんの部屋にいた。あらためて感謝を伝える私に、聡一さんは少し目もとを緩めてほほえむ。  

最近、彼は笑顔を見せてくれる機会が増えた。それも嬉しい。  

聡一さんといると、嬉しいことがたくさんある。

「それだけじゃない。おまえに、俺の働く姿を見てほしかったんだ」  

なにげないような彼の言葉に、私の胸はじわりと暖かくなった。

「……はい。お仕事している聡一さん、とってもステキでした」

「そ、そうか……」  

自分で話を振ったクセに照れたようにゴホンとせき払いをする彼に、私はクスリとほほえむ。こういう、恥ずかしがり屋さんなところも好きだ。

「……」  

なにげなく考えた言葉に、私は自分でどきりとする。  

――そうだ。  

もう疑いようがない。私は、聡一さんのことが好きなのだと思う。  

これは契約違反だろうか。  

隣に座る彼の横顔をそっとうかがう。  

わずかに私から目をそらすようにしてテレビ画面に映る映画を眺める、その横顔。  

私は小さく息を吐いて、テーブルの上のティーカップへ手を伸ばす。その指先が、なにげなく伸ばされた聡一さんの手に触れた。

「!」  

はっとしたように彼が腕を引っ込める。

「すまない」

「……いえ、私こそ……」  

謝りながら、私は絶望的な気持ちになった。  

――この人はこの先も、決して私に触れないのだ。  

そう思うと胸が苦しい。

「……聡一さんは、私にさわりたいとか、少しも思わないんですか?」  

気がつくと、そんな言葉を口にしていた。

「……」  

聡一さんが驚いたような顔をしている。しまった、おかしなことを言ってしまった。  

と、思った次の瞬間、長い腕が伸びてきて肩を抱き寄せられた。

「え……」  

指先が、私の顎をとらえる。  

吸い寄せられるように、ふたりの唇が重なった。

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著者・深志美由紀(みゆきみゆき)プロフィール

官能小説家。「あなたは私を解き放つ」にてコバルト文庫ノベル大賞佳作受賞。
「花鳥籠」にて第一回団鬼六賞優秀作受賞、映画化。
スポーツニッポンにて火曜水曜エッセイ連載、乙女系電子書籍多数配信中。
著作に「美食の報酬」(講談社文庫)「ゆっくり破って」(イーストプレス)など。
CSエンタメ~テレ「女の秘蜜 妄想ノススメ」アンコール放送中。
ツイッター:@angelusace

(modelpress編集部)

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