遠い日の子守歌の思い出に浸る間もなく、やっぱり貞操の危機なんですが!?<イケパラ☆シェアハウス桜沢葵編 第3話>

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【モデルプレス×KADOKAWA共同企画/独占連載】天才ピアニストはオネエで美人で妖しいくらい色っぽい、私、貞操の危機ですか!?世界で活躍するピアニストの桜沢葵は自由恋愛を謳い、結婚する気がないことを告げながら、なぜか有莉子を押し倒す。危うげな色香をまとう葵にウブな有莉子が敵うわけなく、指先に翻弄され身体を弄ばれて……って、あの、ちょっと待って!?
遠い日の子守歌の思い出に浸る間もなく、やっぱり貞操の危機なんですが!?<イケパラ☆シェアハウス桜沢葵編 第3話>/画像提供:KADOKAWA (C)深志美由紀 (C)じゃこ兵衛
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遠い日の子守歌の思い出に浸る間もなく、やっぱり貞操の危機なんですが!?<イケパラ☆シェアハウス桜沢葵編 第3話>

「うーん……ど、どうしよう……」  

葵(あおい)さんに押し倒された日から数週間が過ぎた。  

始めは少し緊張したけれど、あれ以来とくになにごともなく平和な日々が過ぎている。  

朝食と夕食を住人そろってとり(聡一(そういち)さんだけはレストランの仕事があるので、夕食には間に合わないことが多い)、私は残りの時間でお屋敷の掃除をしたり、余った時間には本を読んだりしてすごす。管理人とはいえとくにしなければいけないこともないので、ゆったりと穏やかな生活だ。  

葵さんにとって、きっとあの日のことはちょっとした気の迷いだったのだろう。普段の彼はどちらかというと、やさしくてよく気のつくお姉さんという感じだった。ほかの住人たちのフォローもよくしてくれるし、食事の支度を手伝ってくれたりもする。  

――きっと、もうああいうことはないよね。

「よしっ」  

私はひとりうなずいて葵さんの部屋の前に立った。  

あの日、彼のピアノを聴いてからずっとたずねたいことがあったのだ。

「あの、葵さん?」  

ノックをして声をかけると、しばらくしてガチャリと扉が開いた。

「……あら。アリコちゃん、どうしたの?」

「あの、少しおききしたいことがあって。お時間ありますか? お仕事中ならあらためますけど……」  

時間はちょうど、お昼の少し前だ。いちおうピアノの音の聴こえないときを選んだけれど、だからといってお仕事中ではないとはかぎらない。遠慮がちにそう言うと、葵さんはにっこりとほほえんだ。

「大丈夫よ、どうぞ、入って」  

葵さんの部屋は、センスのいい北欧調のインテリアでまとめられていた。木目の壁はナチュラルホワイトに塗られ、グリーンのファブリックソファによくあっている。観葉植物が多く置かれ、明るくてとても落ち着く雰囲気だ。

「遠慮しないで、座って」  

うながされて、私はソファへと腰を下ろした。

「紅茶でいい?」

「あ、おかまいなく……」  

ウフフと笑って、葵さんは紅茶を淹れ始める。  

お料理ができるほどではないが、有栖荘(ありすそう)の部屋にはそれぞれ、小さなキッチンが備えつけられていた。

「はい、どうぞ」  

木製の丸テーブルに置かれたカップから、アールグレイのいい香りがふわりと立ち昇る。

「ありがとうございます」

「それで、ききたいことってなあに?」  

葵さんは私の正面のソファにゆったりと腰かけてティーカップに口をつけた。そのしぐさが優雅で、私は思わず見惚れてしまう。  

カップの持ち手をつまむしなやかな指先は爪の先まで美しく、すらりと伸びた背筋が優美だ。

「アリコちゃん?」

「あっ! あ、えっと……」  

私はハッと我に返った。だめだめ、見惚れている場合じゃない。

「あの、このあいだピアノで弾いていた曲についてなんです」

「このあいだ?」  

聞き返されて、なんと答えていいか私は少し逡巡した。  

正直、ちょっと口には出しにくい……けれど、しかたがない。

「え……っと、あの、あの日です。葵さんが、私を……その」

「……ああ!」  

きょとんとしていた葵さんが理解した表情をする。

「私がアリコちゃんを押し倒した日ね!」

「うっ。そ、そうです」  

ズバリと言われてどぎまぎしてしまったが、気を取り直して話を続けた。

「あの日、私が部屋に戻ってから葵さん、子守歌みたいな曲を弾いていたでしょう?」

「ええ……そうね」  

少しだけ首をかしげて、葵さんは何かを思い出すようなしぐさをする。その唇から、流れるように子守歌のメロディが鼻歌になってこぼれ出した。

「……そう! それです!」  

私は思わず身を乗り出す。

「その曲、どこで? 私がお母さんに歌ってもらった歌と同じなんです!」  

私も過去に調べてみたのだが、この子守歌はほかでは聴いたことのない曲だった。これまで、お母さんが自分で適当に歌っていたものだと思っていたのだ。  

だから葵さんの部屋からこの曲が聴こえてきたときは驚いた。

「なるほど……。あれはね、アリスおばあちゃんが私に歌ってくれた歌なの」

カップをテーブルに置き、葵さんが私の顔を見つめる。

「おばあちゃんが……?」

「ええ。私が有栖荘にきたときに言われたの。『この曲を弾いてくれない?』って、子守歌をくちずさんで。それ以来、おばあちゃんのためによく弾いてあげたわ」

「そう、だったんですか……」  

――おばあちゃんが、この歌を。  

頭の中で、パズルのピースがはりそうではらない。

「……お母さんとおばあちゃんが、同じ歌を歌ってた?」

「順当に考えれば、どこかであなたのご両親とおばあちゃんは会っていたんじゃないかしら」  

葵さんの言葉に、私はぱちくりと目を瞬かせた。

「そ、そんなことあるでしょうか?」

「あるんじゃない? 現に、おばあちゃんはアリコちゃんの存在を知っていたんだもの。きっと、あなたたちの居場所を探し出していたんだわ。会いたいと思っていたんだと思う」  

――そうなのかもしれない。  

それなら、どうしてお父さんとお母さんは、おばあちゃんのことを私に教えてくれなかったんだろう。  

わからない。でもとにかく、お母さんの子守歌はおばあちゃんの歌でもあったということだ。  

会ったこともない、遠い存在だったおばあちゃんが、なんだか少しだけ身近な存在になった気がする。

「……ありがとうございます、葵さん」

「アタシはべつに何もしてないわ。……ところで、アリコちゃん」

「はい?」  

私が首をかしげたのと同時に、葵さんがすっくと立ちあがる。その姿もしゃんとして美しく、思わず視線を奪われてしまった。立てば芍薬とはよく言ったものだ。  

しかし、次に彼から発せられた言葉は私のそんな想いを吹き飛ばしてしまうようなものだった。

「アタシの部屋でふたりきりになるなんて……どういうことかわかってるのよね?」

「え?」  

まずい、と思ったときには、葵さんは私の目の前に立ってこちらを見下ろしていた。  

その瞳に宿る、誘惑的な気配。私はまるでいすくめられたように動けない。

「アリコちゃん――」

「有莉子(ありこ)ちゃーん!」  

葵さんの顔が間近に近づいたとき、廊下から大きな声が聞こえた。

「は、はい!」  

私はとっさに返事をする。

「真生くん!」  

あわてて葵さんの部屋を出ると、大きなお土産を持った真生(まお)くんが私の部屋の前に立っていた。

「あれ、有莉子ちゃん、葵の部屋にいたの?」

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著者・深志美由紀(みゆきみゆき)プロフィール

官能小説家。「あなたは私を解き放つ」にてコバルト文庫ノベル大賞佳作受賞。
「花鳥籠」にて第一回団鬼六賞優秀作受賞、映画化。
スポーツニッポンにて火曜水曜エッセイ連載、乙女系電子書籍多数配信中。
著作に「美食の報酬」(講談社文庫)「ゆっくり破って」(イーストプレス)など。
CSエンタメ~テレ「女の秘蜜 妄想ノススメ」アンコール放送中。
ツイッター:@angelusace

(modelpress編集部)

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