あなたの暑さ対策って何ですか?(小堀真嗣)
私は大阪支社で記者をしております、小堀と申します。今日は7月19日の繊研新聞6、7面に掲載された特集「イチ押し差別化素材」を読者の皆さんにご紹介させていただきます。
この特集は繊研新聞の数ある特集のなかで長寿企画の一つ。さかのぼると20年以上前から続いている企画です。内容は特集タイトルそのままですが、繊維を扱う会社による“イチ押し”の素材を紹介するというもの。年に2回(3、7月)掲載しています。
掲載している素材は、合成繊維や天然繊維の素材メーカー、加工業者が開発した独自技術による素材、または繊維系の商社が扱うオリジナルの素材など、幅広い繊維素材が載っています。
「イチ押し差別化素材」特集をこのように紹介するコラムは今回で4回目。生活にとても身近な存在なのですが、普段はあまり気にされることのない繊維素材に改めて目を向けていただこうと思って書き続けています。
【最新のイチ押し差別化素材特集はこちら】
暑い夏どう乗り切る?
これまで次のようなテーマで書いてきました。
服を買う時に気にするポイントは何ですか?あなたの好きな素材は何ですか?あなたの気になる素材は何ですか?今回のテーマは暑さ対策です。特集のなかでも触れたのですが、近ごろの長く、暑い夏を皆さんはどんな工夫をしながら乗り切っていますか?
日中の外出から就寝まで1日を通して、いろんな対策がありますよね。帽子や日傘、サングラス、ひんやりシートのように以前からある物や、最近だと小型扇風機が一般化しましたし、電動ファン付きウェアを街中でも見かけることが増えました。
ちなみに私は、ここ数年で帽子は手放せなくなりました。日差しが強い日はサングラスもかけるようになりました。服も変わりました。過去の特集やコラムでも何度か触れていますが、自宅でも外出でもウール製のTシャツばかり着ています。防臭性(臭いの発生を防ぐ)、吸湿性(衣服内の湿気を吸って、吐き出す)という実用的な機能を天然の状態で備えている。見た目もギラついた光沢がなく、上品さがあって、普段から仕事まで色んな場面で使えます。
実用的な素材たち
さて、今回の特集でも暑い夏に役立つ繊維素材をいくつか紹介しています。優れた通気性を備えた素材や、汗をかいたとしても服が肌にはりつきにくいサラッとした質感を保つ素材、紫外線(UV)を遮る素材など。消臭素材も実用的ですよね。
帝人グループの帝人フロンティアは高い通気性を持つ「爽多」(そうた)という新素材を発表しました。日よけの“すだれ”をヒントに開発したそうで、生地の通気性を高めるためにスリット(切れ込み)が入っています。その生地にUVカットの加工もされています。
クラレトレーディングの「エプシロン」は優れた速乾性を備えた繊維で、「エプシロン」を使ったTシャツなら、汗を素早く吸収するため肌面をサラサラに保つとのこと。発汗量が多く、運動中の生地の摩擦にも気を配る必要のあるテニスやバドミントンのウェア用として関心が高いそうです。
小松マテーレの「マーバス」も吸水速乾性が特徴です。これは一般的なポリエステルの性質を変えた“改質ポリエステル”。基本的にポリエステルは水分を吸いませんが、改質技術により吸水性や汚れ除去性などの性能を持たせました。ポリエステル本来の耐久性も備え、実用性が高まりました。
暮らしをもっと快適に
暑さ対策も含めて、暮らしをもっと快適にしたり、ちょっとした“不快”を少しでも心地良くしたりする繊維素材が実はたくさんあるんです。
東レのなかで人気のある素材の一つ「カルイシ」。これは秋冬向けに提案している起毛した編み物(ニット)。起毛は生地表面の繊維をかき出してふっくらとした質感に加工すること。皆さんも起毛ニットによる温かさは体感されたことがあると思います。カルイシは優れた保温性とともに、軽さが特徴。同じ厚みの素材と比べて重量は半分。アウトドアやスノースポーツなどで使われるウェア用の素材として国内外から問い合わせが増えているそうです。
一方でシキボウの「フィスコ」は、天然繊維の糸なら通常は表面に見られる毛羽立ちを除去する特殊な製法で作られた糸です。フィスコを使った生地は毛羽がないために、滑らかな肌触りと品を感じる光沢が特徴。着用した時のメリットだけではなく、生地メーカーから「毛羽落ちが少なくて扱いやすい」「色がきれいに染まる」といった声もあがっているようです。
シャツを脱いだ時に気になるのが襟の内側の皮脂汚れ。この悩みに応えるのが日清紡テキスタイルの「ラクリア」という防汚加工シリーズ。シリーズのなかには口紅やファンデーションなど化粧品汚れに対応した加工もあります。新しく加わったのが「ラクリアエコ」。防汚加工に使われている加工剤に含まれる有機フッ素化合物(総称をPFAS=ピーファス)と呼ばれる物質について、「人体や自然環境への悪影響が懸念される」として欧米を中心に規制する流れが強まっています。この流れを受けて日清紡テキスタイルは、PFASを使わない加工を開発したのです。
いかがでしたでしょうか。暑い夏に試してみたい素材はありましたか?普段、何気なく手にして、着ている素材に改めて目を向けてみてください。時には着比べてみてください。素材が違うだけで着心地が変わるかもしれません。あるいは「こうだったらいいのに」と感じることもあるかもしれません。そこに新しい素材開発のヒントが隠されているんだと思います。
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こぼり・しんじ 大阪支社編集部・記者。2007年入社、大阪支社でスポーツメーカー、小売業を担当。2012年に東京本社へ異動。川上分野を担当。副資材、マネキン、合繊、商社などを担当し、2020年に大阪支社へ。現在は紡績、副資材をメインに担当。滋賀県出身
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