<内田雄馬インタビュー>「弱い部分をちゃんと伝えたい」 個人・内田雄馬として今届けたい想い

<内田雄馬インタビュー>「弱い部分をちゃんと伝えたい」 個人・内田雄馬として今届けたい想い

2023.11.29 18:15

声優として圧倒的な人気を誇り、アーティストとしても5周年を迎えた内田雄馬。そんな彼が11月29日に新たにリリースした3rdアルバム『Y』は特別な意味を持つと語る。アルバムに込められた想いから、初めて自身で作詞作曲した楽曲「旅路」についてもたっぷり語ってもらった。

3rdアルバム「Y」に隠されたメッセージ

ー 3rdアルバム「Y」のリリースおめでとうございます!前回の2ndアルバムから約2年ぶりのリリースになります。その間、初の武道館ライブを開催するなど、様々なことがあったと思います。この2年間を振り返ってみていかがですか?

内田:ファーストツアーから2ndアルバムを出すまでの間、ライブ活動が止まってしまいましたが、幕張で行った「Equal Sign」や武道館で行った「Gratz! / your world, our world」、そして今年は「Keep in Step with」というツアーを行うこともできたのが印象深いですね。同じ場所・同じ空間で音楽を共有することの楽しさやパワーは、計り知れないものがあって。ライブがあればそこを目標に頑張っていけるし、応援してくださる皆さんもライブを楽しみに待ってくれている。ライブはみんなが気持ちを高め合い迎える特別な日だと感じます。みんながひとつになる瞬間は大事にしたいとより感じる2年間でもありました。

ー 改めてライブの大切さを感じる2年間だったんですね。

内田:そうですね。「Equal Sign」や武道館ライブは声出しが禁止で、それを経ての今年のツアーだったので。皆さんと一緒に盛り上がれたのはかなり大きな変化でした。

ー 今回のアルバム制作にも影響はありましたか?

内田:前回のアルバム「Equal」は“アーティスト内田雄馬”らしさを詰め込んだアルバムでした。その分、この2年の間で“アーティスト内田雄馬”を形作っている根本はなんだろう?と振り返る期間だったと感じます。みんなと楽しく音楽を共有したい想いをしっかり伝えるために、自分の言葉でもメッセージを届けたいという気持ちが芽生えて。

内田雄馬(C)モデルプレス
内田雄馬(C)モデルプレス
ー 何かきっかけが?

内田:武道館ライブの時に、ふと「これは僕のライブなんだな」と感じたんです。それまでは僕がいなくてもなんとかなるだろう、と思うこともあったりして。ただ幕が開ける前、カメラや明かりの調整、音のチェックをしているチームスタッフの様子を見ていたら「僕がここにいなかったらどうなるんだろう」「僕がいなければ恐らく内田雄馬のライブにはならない」という思いが頭をよぎったんです。それまでも何度か感じたことはあるんですけど、武道館で感じた感覚は強烈に僕の中に残りました。僕は自分の気持ちを伝えるのが恥ずかしかったり、自分の気持ちを素直に認められなかったりすることが多かったんです。でもアーティスト活動を始めたのは自分自身だし、それをちゃんと認めてあげないといけない。それには弱い部分も含めてちゃんと届ける必要があると感じたんです。

ー 自分を大切にしてあげられるようになった?

内田:そうかもしれないですね。「自分のことが好きじゃない」と思う瞬間は今もあります。でも、応援してくださる皆さんとチームスタッフのみんなで面白いものをたくさん作ってこれた。それは最初の一歩を踏み出した自分がいたから。そんな自分をちゃんと認めてあげられるようになりました。だから「自分のことを好きだ」と思えたのは、アーティスト活動を通してたくさんの方が内田雄馬の音楽を聴きに来て楽しんでくれたおかげなんです。その想いは初めて作詞作曲した「旅路」にも書きました。

ー そんな「旅路」も収録されている3rdアルバム「Y」は内田さんの集大成のようなアルバムだと感じました。今作のコンセプトを聞かせていただけますか?

内田:アルバムタイトルの「Y」は僕の名前「ゆうま」の頭文字でもあるほかに、“3本の線”で構成するという意味もあります。1作目の「HORIZON」は地平線という意味で1本の線、2作目の「Equal」は記号にしたときに“=”となるため2本の線、そして3作目は3本の線を引いた「Y」になりました。

ー そういったテーマもあったんですね。

内田:はい。それとは別に個人的に「Y」には大きな意味合いがあると感じています。僕は声優業もしていて、アーティスト活動もしている。さらに2つの仕事にプラスして個人の「内田雄馬」という、3つのバランスで僕自身は成り立っているんです。

ー 最初のアルバムの1本の線からずっと繋がっていたんですね。

内田:最初の頃は意識していたわけじゃなかったんですが、気付いたらそうなっていましたね。1枚目に関しては色んな楽曲に対して多様なアプローチをする、どちらかというと声優に近い感覚がありました。2枚目はアーティストとしての内田雄馬が見せたい音楽やパフォーマンスを意識していて。そこから3枚目でどんなアプローチをしようと考えた時に、今の自分らしさが詰まったアルバムになったんだと感じます。声優もアーティストも個人も含めた5年分の経験が全て入ったアルバムになりました。

内田雄馬(C)モデルプレス
内田雄馬(C)モデルプレス

内田雄馬、初の作詞作曲に苦戦

ー アルバムに収録されている楽曲についても詳しくお聞きしたいのですが、まずは内田さんが作詞作曲された「旅路」からお聞きできますか?

内田:いつかはチャレンジしたいとずっと思っていたんですが、ありがたいことに着手する余裕がないほど仕事が忙しくて…。でも今年に入ってから仕事のやり方を少しずつ変えていき、3枚目のアルバムが出るタイミングで出そうと決めました。今回のアルバムはコンセプト的にも今の僕を表す名刺代わりのような作品になると思うんです。そう考えた時に、自分の言葉や気持ちが入った楽曲を作るなら今だと思い、「やらせてください!」と話し作り始めました。

ー 先ほども少しお話ししていただきましたが、歌詞に込めた想いを聞かせていただけますか?

内田:やっぱり僕自身の感じていることを素直に伝えたいと思いました。今の内田雄馬があるのは出会ってきたたくさんの人のおかげで、その感謝の気持ちを伝えたいという気持ちもありました。なので1番の歌詞には一歩踏み出すまでの弱い部分を書き、2番以降は一歩踏み出すことで素敵な出会いがあり、そのおかげで自分を認めてあげられたことを書こうと。

ー 内田さんが感じてきたことを赤裸々に描いているんですね。

内田:そうですね。自分の人生は一歩を踏み出したことで大きく変わったし、自分を変えられるのは自分自身しかいない。僕のように自分を好きになれなかったり、一歩踏み出すことに躊躇している方にはぜひ聴いてほしいです。何かに挑戦する時って孤独に感じたり、自分が無力に感じることもあると思うんです。そんな時は「内田雄馬がまた新しいチャレンジをしているぞ!」と思ってもらえると。きっと今まで歌っていた楽曲のメッセージとも合致して届けられるのかなと思います。

内田雄馬(C)モデルプレス
内田雄馬(C)モデルプレス
ー 初めて作詞作曲をされたとのことですが、どんな部分が大変でしたか?

内田:全てが大変でした(笑)。一歩目が本当に難しいんですよね。ノウハウも無いので何から手を付ければいいのかもわからず…。とりあえず伝えたい想いをまず1回詩に書いて、その詩を元に何となく曲を弾いていきました。自分で作ってみて改めて世の中のクリエーターさんの凄さを痛感しましたね。それは良い気付きにもなったし、逆に自分の知識や経験が増えれば色んな楽曲を作れるんじゃ無いかという前向きな気持ちも湧きました。最初の一歩は結構大変でしたけど、これから続けていきたいと思える経験になりました。

ー 実際にどれくらいの期間で完成まで?

内田:だいたい半年くらいかかりました。4月の頭ぐらいには第1稿を出そうと話していたんですが、結局第1稿を出したのは8月で。アルバムに入れる前提で作っていたので、どうなるのか宣伝チームが一番不安だったと思います(笑)。

ー 確かに宣伝の内容も変わってきちゃいますね。

内田:そうなんですよ。プロデューサーも「楽曲を入れない選択肢もあるよ」とずっと言ってはくれていたんですが、今回のアルバムにどうしても入れたかったので、ギリギリまで待ってもらい最後にレコーディングしました。

ー 曲調は最初から落ち着いたテンポに?

内田:実はもう少し早いテンポの曲を書いていたんです。よく遊びで適当なコードをピアノで弾くみたいなこともしているんですけど、そういう時は大抵暗めな曲になりがちで。なので明るい曲にしようと決めていました。素直に自分から出てくる曲にすれば良いのに、制限をしたからか大変な思いをしました…(笑)。とにかく全然うまく歌詞がはまらなくて、何度も試すうちに今の形に収まりました。

ー ありがとうございます。表題曲の「Joyful」についてもお聞きできますか?

内田:「Joyful」は“アーティスト内田雄馬”として今感じてることが反映された楽曲になっています。今年のツアーの時に、ライブが中止になってしまったことがありました。その時は申し訳ない気持ちでいっぱいで。ただファンの皆さんから励ましのコメントやお手紙をいただき、「内田雄馬の音楽はたくさんの人に支えられてるな」と改めて実感しました。その気持ちをちゃんと歌いたいと思ったし、辛いことがあってもみんなで支え合い楽しいことは共有しようというメッセージが届けばなと。みんなに支えられる姿がMVにも反映されていて、みんなで繋ぎ合わせて作っていく音楽が自分の人生という意味でも大事だと感じます。そんな想いを「Joyful」で描きました。

ー 3曲目というのも理由が?

内田:今回はアルバムの曲順にもこだわっていて、「Joyful」をあえて1曲目にはせず最初に「I’m here」を入れました。「I’m here」に書かれていることは個人の内田雄馬はもちろん、声優としてもアーティストとしても意識していることです。常に自分の壁に向き合い挑戦を続けていくこと。その想いを伝える「I’m here」から「Joyful」へと繋がる流れにしたいという想いがあります。

ー 1回通して聴いてもらうのが良いかもしれませんね。

内田:ぜひ、そうしていただきたいです。知っている楽曲も流れで聞くと、また違うストーリーに感じることがあると思うので。是非「Y」は通して聴いてほしいなと思います。

ー 「Joyful」はカラフルなMVも印象的ですね。

内田:セットも面白く、「Y」の形をした積み木があったりするんです。僕はダンスが好きというのもあり、4人の「うちダンサーズ」のソロパートも入れていただきました。観たら本当に元気の出るMVになっているんじゃないかなと思います。

ー その他でこのアルバムに収録されている楽曲で、印象深い出来事はありますか?

内田:今作はMVも多く、「Joyful」「ものたんない」「Hope」の3つのMVは1日で全て撮影しました。

ー えっ‥!3つを1日で!

内田:自分でもよく撮れたなって思います(笑)。これも長く一緒にやっているチームの皆さんのおかげだなって改めて思います。

ー 「ものたんない」のMVは一発撮りのような構成ですよね?結構時間がかかりそうな…。うちダンサーズの皆さんも緊張しそう…。

内田:どちらかといえば僕よりダンサーが緊張していましたね(笑)。しかもダンサーには色んなことをしてもらったんですけど、それを頼んだのも今回は当日だったので…。でもそのおかげで良いMVになりました。「ものたんない」は深い事は考えず、とにかく楽しんで聴いていただければと思います。

ー ダンスも見どころですね。

内田:注目してくれると嬉しいですね。特に「DangeR」という楽曲のダンスはとにかく激しくて。いつも振り付けはYusukeさんが考えてくれるんです。ただこの楽曲に関しては、いつもバッグで踊ってくれている、うちダンサーズのレギュラーメンバー4人がそれぞれ各セクションを作り、繋ぎ合わせたダンスになっています。「遠慮せず作ってください」とオファーしたら、とんでもなく難しい振り付けになり、今までで一番ハードなダンスMVになりました(笑)。その分踊り応えもあるし、見応えもかなりあるんじゃないかなと感じます。「Joyful」とは真逆で「DangeR」はパキッとキメて踊るスタイルなので週1ペースでフリを入れて、約1ヶ月くらいかかりました。この楽曲もかなり印象に残っているので、ぜひMVも観てほしいですね。

内田雄馬(C)モデルプレス
内田雄馬(C)モデルプレス

内田雄馬、仕事への向き合い方「誠実でいたい」

ー プライベートのお話も少しお聞きできればと思います。昨年からライブや6ヶ月連続リリースなどで忙しいと思いますが、リフレッシュする方法はありますか?

内田:2022年はとにかく忙しくて、本当に食べる以外でストレスを解消する方法がなかったんです。それでは駄目だと思い2023年は自分がリフレッシュする時間を作った上で、良いものを作ろうと思うようになりました。そのおかげでゲームだったり、トレーニングをする時間を作れるようになりました。今めちゃくちゃ筋トレにはまっています!

ー 体を動かすことはリフレッシュになりますね。

内田:かなりリフレッシュになります。トレーニングすることでその日の経験値を得たっていう感じですね。育成ゲームに近い感じかも(笑)。ご飯に関しても栄養について考えるようになりました。やっぱりある程度自分の中に余裕がないとできないことなので、理想の形になってきたと感じます。

ー リフレッシュするからこそパフォーマンスにも良い影響がでそうですね。

内田:そうだと思います。2023年は色々な意味で自分のスタイルを改めて作り直さなきゃいけない時期だったと感じます。やっぱり身体はもちろん、心も元気じゃないと良い仕事ってできないですから。来年以降もよりパワー入れて良い仕事が出来そうな実感があります。

内田雄馬(C)モデルプレス
内田雄馬(C)モデルプレス
ー 仕事に取り組む姿勢というのは年々変化していますか?

内田:これはコロナ前はありがたいことなんですが、仕事をたくさんさせていただいて忙しい時期が続いて、限界まで働き続けるという感じだったんですよね。でもコロナで一度に仕事がなくなり、そのおかげもあって1回立ち止まって自分を振り返る時間が持てましたね。このままの自分でいいのか。たくさん考えても、今まではなかなか答えを出すことができなかったんですけど、やっと今自分の気持ちや思いを形にすることができるようになってきました。

ー 「旅路」もその1つに。

内田:はい。頭の中をある程度まとめられるようになってきたと思います。それまではどう表現していいか分からないし、人と会う機会も減り結構しんどかったですね。今は「自分の意思を持ち、お仕事に向かうことが大事だ」と言葉にできるようになりました。どうしても声優というお仕事は受け身なんですけど、だからこそ誠実に向き合わなければいけないと思うんです。

ー 誠実に向き合うというのは本気で取り組むという感覚?

内田:本気で取り組むのはどの仕事でも変わらないですね。ですが、身体や心が疲弊してくれば本気のそのレベルは下がっていってしまいます。思っている以上に声が出なかったり、滑舌が悪くなったり。僕はその状態で現場に行くことに抵抗があって。

ー 本気が出せないことは誠実じゃないと。

内田:僕らは与えられたものをいかに声で表現するかという仕事です。その良し悪しは僕らが判断するものではないのですが、コンディションは自分で管理しなければいけないと思っています。一緒に仕事をしている人には気づかれてしまうんですよね。「大丈夫?疲れてるね」って。

内田雄馬(C)モデルプレス
内田雄馬(C)モデルプレス
ー 同じ仕事をしていると気付いてしまうんですね。

内田:現場でそう言われるくらい顔や身体に現れてしまっていたら、もうパフォーマンスどころではないですよね。仕事をいただけるのはとてもありがたいことですが、自分をちゃんと管理して現場に行くことが出来ないならその仕事を受けるべきじゃない、それは誠実じゃないと僕は思います。恐ろしいことではありますが、時には断る勇気も必要。だからこそ一つひとつの仕事に全力で向き合い、長く届けられるような仕事のスタイルを模索してきました。それが今年になってやっと形になっているので、ちゃんと誠実に仕事に向き合えていると感じます。だからこそ3rdアルバム「Y」を出すことが出来たんだと思います。

ー 全て繋がっているんですね。

内田:本当にそう感じます。声優もアーティストも内田雄馬だし、個人としての内田雄馬ももちろん内田雄馬だなって。コロナ禍になったのは自分の中で結構大きな変化のきっかけになりました。もしコロナ禍になっていなかったら、全く違う内容の活動になっていたかもしれません。2024年は僕たちが大切にしているライブもたくさんできるようもっと頑張っていきたいです!

ー ありがとうございました。

内田雄馬(C)モデルプレス
内田雄馬(C)モデルプレス
(modelpress編集部)[PR]提供元:キングレコード株式会社

ヘアメイク:花嶋麻希
スタイリスト:奥村渉(WM)
衣装クレジット:glamb Tokyo

3rdアルバム「Y」

5th Anniversary BOX(提供画像)
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●ワンピースBOX仕様
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CD+BD盤(提供画像)
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